短編 | ナノ






いつからこんな体になったのかは分かりません、それこそ神様しか知らないのでしょう。
ですが気づいた頃から男性は苦手だったように感じます。
触れられるとどうしても拒絶反応が出てしまうのです。

そしてこんな私を男性死神のるつぼに飛込ませたうちの隊長、てめーの命はないと思え。





「名無しちゃ〜ん、飲んでる〜?」

「きき、京楽隊長…私まだ未成年ですから…」

「あれそうなの〜?じゃあお酌してよ名無しちゃん!」



お酌!?
半径30cm以内に近づけない私がお酌!?

無理です、お酌なんてしたら私の持ち物とあなたの持ち物が触れ合うじゃないですか。
それさえアウトなんですよ、こっちは。




「それにしても名無しちゃんの肌はいつも白くて綺麗だね〜」



違います、血の気が引いてるんです。



何も気づいておられない京楽隊長が一升瓶を私に手渡されるものですから。
なかば冷や汗ダクダクで精一杯距離を取りながらお酒を受け取った時。




「おっと」



ほろ酔いだった京楽隊長がふらついて私の腕にガシッとつかまりになった。



「いやああああっ!」


ドゴンッ


無我夢中で腕を振り払おうとしたら持っていたお酒の瓶がすっぽ抜けてしまい。
京楽隊長の口の中にホールインしました。




「もがっ」

「え?」



気がつくと口から一升瓶を半分生やしながら、京楽隊長がその場にお倒れに。

「まずい!」と思い辺りを見渡しても、皆さんドンチャン騒ぎに夢中でどなたもこちらを見ていない。
セーフ。

一度意識のない京楽隊長に謝って、こっそりその位置から退散しました。






――――――……


ふう…驚きました。
主に京楽隊長にですが、隊長格の瀕死に気づかない周りの人達にも驚きました。

ああもう、心臓が飛び出るかと…




「おう名無し!何やってんだ、んなとこで!」

「うわわわわわ!
ひっ檜佐木副隊長!?」



よりによって檜佐木副隊長に見つかるなんて中々の嫌われぶりです、神様から。

なぜかこの方はやたら腕相撲を挑んだり肩車したがったり私の最高苦手分野のスキンシップを好んでおられる方です。
元から男性隊員の多い九番隊、そういうスキンシップが多いのでしょう。

…と言うか檜佐木副隊長、もしかしてかなり…






「よし!
名無し、鬼ごっこしようぜ!」



かなり酔ってらっしゃいますよね!
しかも鬼ごっこって何ですか、このただっ広い宴会場で走り回る気ですか。

いえ踊り出してる方とかはいらっしゃいますけども。






「なっ何でいきなり…」

「お前のうるんだ目ぇ見たら追いかけたくなってよー」



違います、怖くて泣きそうなんです。










「よーし追いかけるぞ!」

「嫌ですううう!」



バビュンッとそれはもう光のごとく逃げました。
途中で振り返ると、ちゃんと目を閉じて十まで数えている檜佐木副隊長がいました。

……お馬鹿なのか、全てお酒のせいなのか、私には判断しかねます。




 




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