「訳の分からんもんばっかり集めとるなあ、ほんまに。なしてコーヒー豆の残骸があるん」
「それは俺が過去に挽くのに失敗したものです」
名無しの部屋へ案内はしたが、入口から先へは決して入ろうとしなかったウルキオラがそう答えた。
今もなお、口を開けた扉の前で立ったまま、感情もなくこれらのガラクタを見下ろしている。
「コーヒーという物の扱いを心得ていなかったので」
「……へえ。じゃあこのガラスの破片は何やろ」
「以前ネリエルとノイトラが決闘をした際に誤ってガラス像を割った時のものです」
「この魚の鱗は?」
「東仙様がワンダーワイスの情操教育のために魚を持ち込んだのですが結局食われてしまい、その残骸です」
残りの全てのガラクタの由来も、ウルキオラは滔々と語ってみせた。
それは立場上あらゆる破面の行動を把握しているからなのか、それとも名無しが話して聞かせたのかはわからなかった。
「何度も捨てるよう命じたのですが、やはり従ってはいなかったようで」
「あの子にとっての宝物、やからね。でも意外なんは、君がさっさとこのガラクタを捨てへんかった所やけど」
「これはあいつの所有物ですので。所有者の許可なく捨てる真似はしません。あいつが持っていたボウルは俺が監督する厨房の物でしたので、没収したまでです」
「……ああ、なるほどなあ」
名無しの宝物は初めて拝むことができたが、結局ここにも本人はいなかったわけで。
万策つきたと立ち上がった時、突然頭にキィンと音波が流れ込んだ。
藍染が遠くにいるとき、自分へ連絡をしてくる一つの方法だ。
この会話の方法は何となく気色悪くて好きになれないが、流れてきた言葉を聞くと、そうも言ってられなくなった。
『低級の破面が、虚圏の端で名無しを見かけたという』
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