(…ほんまにあの子を従属官にするん?)
(一応とは言え二桁の数字を所持しています)
(いや問題はそこやのおて)
では何が問題か、と追求されても上手い答えが見つからないので、それ以上は言及しなかった。
何に関しても藍染へ第一に報告するこの優秀な四番目の十刃が、その法則を無視して自分に伝えに来たこと自体をくみ取らなければならない。
(ほんまに「一応」やで、99なんて数字は)
(そうでしょうね。俺は報告に来ただけですので)
(なして僕に?)
(はて)
さも意外そうにかすかに目を見開いてから。
(あれと懇意な貴方に許可を得ようとしただけですが)
僕はこの子に嫌われている。
君主である藍染さんの真下にいながらふらふらと何もしないで歩き回っている僕は、さぞ怠慢に見えることだろう。
だから僕と似ているあの子のことも、きっと嫌うと思っていたのだけども。
(名無しちゃんは僕のやあらへんよ。僕も君も藍染さんのもんやけど、あの子はそれもあらへんしなあ)
そこから先を聞くことなく、ウルキオラはいつものように速やかに部屋を出て行った。
名無しは藍染さんに嫌われとるからなあ。
その一言を聞くよりも早く。
現在の数字持ちの破面の最多ナンバーは77。
それを通り越して99を与えられるということがどういう意味なのか、恐らくあの子も分かっている。
――――――…
「名無しちゃーん」
「はーい」
「なんやそこにおったんー…ってうわ、なしたん」
ぎょっとした。
あんまりぎょっとして持ってきていたボウルを落としそうになった。
普通にただそこへ座っていたと思ったこの子が、普通にボロボロと泣いていたから。
涙を流す破面なんて僕は一度も見たことがない。
「気にしなくても大丈夫」
「けどほんまにびびるでそれ。なしたん」
ごしごし袖で名無しの目元を何度か拭ってみたけども、途切れなくこぼれていくそれについていけずにやめた。
この子もそれを知っているのか頬をつたう涙もさせるがままにしている。
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