いよいよきつく抱きしめて君の顔をしっかりと僕の体へ押しつけると小さな鼓動が聞こえてきた。
この音を消すことも繋げることも出来ると思うとなぜか胸のどこかが苦しくなる。
「名無しは、生きたい?
それとも死んでもええ?」
「…ギンの好きな方でいいよ」
いつものように君は笑う。
僕が君の考えを受け入れなくても君はそうやって微笑む。
逆も同じ、君が僕の考えを受け入れなくてもそうやって何も気にせず笑う。
僕が誰よりも好きになったその姿全部で。
本当は手離したくないその暖かな温度全てで。
けれど僕はそれらを壊すに違いない。
最後の最後で独占欲と嫉妬心が暴れ回ることは分かっている。
きっとこれが真実で、この終わり方が変わることは、決してない。
誰かに受け入れられることを知らなかった僕の中にある歪んだ愛と子供のような寂しさを名無しが受け入れてしまったから。
どれだけ君が笑ってもどれだけ君を抱きしめても行き着く場所を僕は知っている。
どれだけ君を愛してもどれだけ今が幸せでも辿り着く場所を、僕は、知っている。
さよならの幕開け(夢の中で見る逃げた君を追いかけて殺す僕の顔は、なぜだろう、いつも泣いている)
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