そりゃ、隊長と言えど同じ場所で働く仲間が十二人いるわけで。
関わりが深いその下の隊長も十三人いるわけで。
つまりは何が言いたいかと言うとですね、人間もとい死神関係がいろいろと大変のは認めましょうと。
ストレスだってたまるでしょうと。
…だからって、市丸隊長。
私でストレス発散しないでください……
◆部下で遊ぶ10の方法◇
かんっぺきイライラしてる。
機嫌が悪いと言うことは事前に吉良副隊長から聞いていたけど、何だかそれ以上の事になっています。
ああ、私は三番隊第三席副官補佐のどこかの 名無しと申します。
今非常にピンチです。
書類を届けに隊長室まで来ただけですが。
わっかりやすいくらいに市丸隊長がイライラしていらっしゃいます。
いつも外では(ある意味)ポーカーフェイスを崩さない方ですが、さすがに自分の室内となると変わるようです。
こんな日は関わりが無いようにそーっとしておくのが一番。
「隊長、書類置いていきますね」
「…ああ名無しか。そうしといて」
「はい」
パタンと部屋を出た後、思わずガッツポーズが出ました。
セーフ…あーよかった、今日は何事もなくて。
このまま隊長の機嫌が直ってくれると良いなー、なんて…。
甘いですかね。
…甘かったですね。
次の日。
変わらず仕事でまた市丸隊長の元を訪れると、なんとイライラが目に見えるようになっていました。
アレです、紫色の波が隊長から発されてるって奴。
一緒に書類を持ってきた吉良副隊長もそうなっているらしく、仕事を整理するフリをして部屋の隅でこっそり話しました。
「どこかの君も見えるの?…アレ」
「…見えますよそりゃ。ちょっと今までにないくらい重度ですね」
そこで吉良副隊長が気づいた。
この人も市丸隊長における私の利用方法を知っている。
「…って事は闇目君、かなり危ないんじゃ…」
「名無し!」
いきなり数m先から市丸隊長の大声が響き、肩が跳ね上がった。
静かに副隊長と視線が交差する。
ヤ バ イ 。
「返事せえ…」
二人でフリーズしていると、いつもより低い声で振り返られた。
あ、これはいけない。
これは即座に反応しなければいけない。
「はっはい!」
「こっち来ぃ、それからイヅルは下がり」
「えっ…あ、はい…」
もはや儀式的になってしまったこの行動に、吉良副隊長は全く含まれていない。
彼には心配しか出来ないのだ。
(副隊長っ…)
(頑張るんだよ、どこかの君)
(…はい…)
アイコンタクトで交わせる会話なんてこれぐらいだ。
それに気づいた隊長が更に低い声で言う。
「何や名無し、イヅルに言いたいことあんなら言えや」
「ああ…はい…じゃ、一つだけ…」
えっと……。
「胃薬用意しておいて下さい……」
副隊長、涙ぐんでうなずいてくれた。
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