その言葉にウルキオラの表情は変わらなかったけど、目の青緑が少し深くなった。
そうなるのは不機嫌になった時と考え事をしている時の二種類があるけど今はどちらなんだろう。
突然無言になったまま、ゆっくりと右手を外にかざして。
小さな虚閃を木の根元に打ち込んだ。
「あ、」
っと言う間に石のようなもので出来た木は炎に包まれた。
素材が素材なので燃えているのはもちろん私が生やした緑の葉もどきだけれど、それでも満遍なく火は燃え広がる。
緑の紙が一瞬にして色あせて黒ずみ、縮れて枝から離れるところまで私の眼ではとらえることが出来た。
あまりの出来事に茫然とそれを見つめる。
「おーお、ひどいことしよるなあ」
「元の状態に戻しただけです。……名無し、これに懲りたら金輪際無駄なことは…」
「枯れた!」
あまりの出来事に、勢い余って声が跳ねあがった。
「市丸様、枯れた!あれ枯れた!」
「へ?…あ、ほんまや。枯れたのとそっくりや」
「ウルキオラすごーい!」
葉が色あせて縮れあがり、黒ずんで砂に落ちて行った姿を見ることが出来た興奮に、多分振り返った私の眼はすさまじく輝いていたと思う。
窓から飛び出して地上に散らばった一枚を手に取ると、それはまさしく想像通りの枯れ葉そっくりだった。
持って戻ってくると、ほんまによう似とるともう一度言ってくれた。
「宝物箱に入れる」
「お、そんなもん持っとるんか。羨ましいわあ」
指でクルクルと枯れ葉もどきに変わったそれを嬉しそうに眺めている私を見て、ウルキオラが息を吐いた。
今思う、暗い中で光を受けたウルキオラの肌は月の色に似ている。
「…戻るぞ。お前の相手をすると俺の体力が消耗される」
「そっか」
じゃあ、と言いながら振り向いた先、市丸様の細めに細めた目が視界に入った。
どうしてこんなに閉じているんだろう。
この世界を見たくないからと、市丸様は言っていた。
でも私はやっぱりそれだけじゃないと思う。
だって目はどこか遠くを見るときだってとてもとても細まるんだから。
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