我が隊の狐…ゴホンッ市丸隊長は、知る人ぞ知る二重人格。
知る人と言っても私と吉良副隊長のみ。
表舞台ではにこやかな隊長を装おっているが、隊室に戻れば腹の中は炭化済みーな黒い人格に戻られる。
それの標的にされているのは悲しいことに私の身体だ。
「…たいひょーぶっころひまふよ」
「堪忍してやー」
「じゃあほっへ引っはるのやめへくははい」
「よう伸びるなー。餅肌やからな名無しは」
「聞いへねえひ」
っとにこの狐は人の顔で遊びまくって。
そう思って私も市丸隊長のほっぺを引っ張ろうとしても当然腕の長さが足りるわけもなく。
「ほーれ届かへん届かへん」
うわあ何この狐。
こいつ殺して私は生きてえ。
「吉良ふふたいひょーこれどうひかしてくははいよ。ひごとできまへん」
「市丸隊長、どこかの君のほっぺは伸縮自在じゃないんですよ。餅あげますからコレ引っ張っててください」
ぽいっ
「あ!隊長今ものすごく簡単に捨てましたね!」
「僕こっちがええもん」
「やめへー」
「ああ痛ったぁ〜…」
「大丈夫かいどこかの君、かなり引っ張られたろ」
「まあ…副隊長が私の代わりに餅を出した時点で諦めてましたから、平気です」
「(ごめんよ…)
…そう言えば、市丸隊長にあげた餅は?」
「さっき火鉢で焼いて食べてました」
磯辺巻きでした。
ちなみに海苔と醤油を食堂までもらいに行ったのは私です。
「ああ、名無し君のほっぺ代わりが…」
「餅に例えるのやめてくれませんかね。『名無しちゃんのほっぺもうまそうやなあ』とか言われたから逃げてきたんです」
「何か…本当にされそうだね」
「ええ全く」
――一時間後
「…どこかの君、悪いけどそろそろ市丸隊長を仕事に呼び戻してくれないかな」
「…しますかね、仕事」
「…しないだろうね」
それでも万が一な事が時々起こるから、三番隊内のどこかにいる隊長を探しに行くことに。
まあ、どうせ餅食べた後だから寝てるんだろうけど。
「…やっぱり」
案の定縁側にひょろ長い背中を見つける。
日の光を受けた銀髪がうつらうつらしてるのを後ろ姿からでも確認出来た。
「市丸隊長、仕事ー…」
あ、そうだ。
ふと思いついて、そーっと忍び足で市丸隊長の背中に忍び寄った。
眠たい時に人は一番無防備になると聞いたことがある。
普段やられまくってるんだからたまには仕返ししたって良いだろう。
そう思って突き飛ばし用の両手を構えて。
「どーん!」
ヒョイッ
「わっ」
後ろから突き飛ばそうと力を入れた体をあっさりと避けられて、めちゃくちゃ体が前に飛び出した。
落ちる!
「え…わわわわわ!」
ガシッ
「っわ…」
飛び込みすぎて縁側から落ちそうになった時、危なく市丸隊長が手を掴んでくれた。
あ、危なかった…
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