─夜─
例年のように隊長と副隊長の集まり(第二部)が催された。
当然、話題の中心は今日一日の被害について。
大体の隊長格のイタズラを把握しているのは日番谷と乱菊なので、二人共参加している。
「日番谷隊長、マユリ隊長は何かされたんですか?」
「実験で衰弱させてた実験体に栄養剤みたいなのを与えられたらしい。一からやり直しだって暴れてたぞ」
うおっほん、と総隊長が場に緊張感を持たせる。
相変わらず威厳を持った声で。
「…さて、今年もかなりの者が被害を受けたらしいの。例によって何もなかったのは…卯ノ花と藍染か」
毎年行われているにしろ、被害を全く受けない隊長も存在する。
それが今言った二人、そして総隊長本人だ。
「まあそれらは日頃の行いとして見よう…どうせ犯人も捕まらぬのじゃ。今日やられたことは良い教訓だと思うが良い。明日からは銘々気持ちを切り替えて日々過ごすように」
最後に朽木が回復した、と告げ、会は締めくくられた。
─集会後、裏庭にて。
「名無しー」
「あ、市丸さーん」
とある四番隊隊員ととある三番隊隊長が出会っていた。
「んー今年も結構できたなぁ」
「そうですねー」
元々このどこかの 名無し、根っからの悪戯好きの性質を持ちながらも四番隊に配属されてしまった核爆弾的な存在。
昔ソロであちこちに悪戯をしていたとき。
(おもろいことしてんなあ)
と偶然散歩中のギンに発見されてしまった。
(あかんでー、そんなことしたら)
その、世にも真っ黒で楽しそうな笑顔を見せられた。
(えう、あの…見逃してください…)
(ええよ)
(へっ?)
そのかわり、と言うことで。
(僕も仲間にいれてぇな)
そんなこんなで今に至っている。
しかし、さすがにちょこちょこイタズラをしていたらバレるのではと考えた。
話し合った結果、一年のうち一日に的を絞り、その他の間は怪しまれないように評判作りをすると言うことで落ち着いた。
悪賢いため、どうすれば微塵も疑われないかを知っている。
「あのタコ焼きダミーは凝ってたなあ」
「そっくりに作るの大変でした」
ちなみに材料は全て浦原商店にて取得(口封じ済み)。
よくよく考えれば男湯に薬を混ぜられるのは男しかいないし、マユリの入れられた栄養剤なんて四番隊の滋養強壮剤だし。
それでも例年のことだから深く考えないのが隊長達の弱点だと名無しは思う。
「こんなあっさり行くならもっと手が込んでても大丈夫やん?」
「…うーん…どうでしょう」
「これくらいにしておいた方が良いよ」
「せやな、藍染さんもそう言っとることやし……………………………………って」
沈黙。
そして。
「「ええええ!!?」」
いつの間にか二人の間に藍染が立っていた。
今回も被害を受けなかった隊長の一人。
「なっなして藍染さんがここに…」
「ギンの部屋の狐って嘘なんだろう?
もうそろそろ気を付けないと」
「「あ…はい…」」
ニッコリとギンに勝る黒い笑顔で立ち去っていった恐るべき藍染。
名無しはこの人からギンの黒い笑顔が伝わったことを悟った。
「なして嘘やってバレたんやろな…今まで大丈夫やったのに」
二人が犯人だと言うことが今までバレていないのは、ギンがイタズラに巻き込まれたことを演じているからもあった。
「市丸さんの被害だけ誰も見ていないからですよ…きっと」
「ああ、それや。相変わらず勘のええ人やなあ、四番隊長さんと藍染さんにやらんで良かったわ」
「上司ですしね」
とりあえずこれ以上の凝り方はしないでいよう。
そう決めながら、さっさと来年のイタズラを考え出した二人だった。
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