短編 | ナノ






―昼―


「うわああっ!昼寝してたらいつのまにか髪の毛がパーマに!」

「砕峰殿!背中に落書きがああ!!」



七人目、八人目と被害が拡大していく中。
ついに最大の犠牲者が出た。



「あ、名無し。どこ行ってたの?」

「ちょっと切れたお薬を取りに行っていました」

「あんたも大変よね…処理に追われて。そう言えば、ギンはどうだったのかしら」

「室内で大量の狐が放し飼いにされていたらしいですよ…」


(せや、ちょっと怪しいことあったんや)


「『ちょっと怪しい』レベルなの?」

「さあ…」



【被害者9 部屋に狐を放される。】



そんなとき、せわしなく日番谷が走ってきた。


「おい名無し!すぐ来てくれ!」



その尋常ではない様子に、すぐ後を追う二人。
駆け込んだ場所は、六番隊隊室。



「ど、どうしたんですか朽木隊長!」



そこには、顔を真っ青にして膝をついている朽木 白哉の姿が。
何か異物を口にしたのか、口元を押さえている。



「とりあえず、四番隊の医務室にお運びしますね」

「ああ、頼んだ」



朽木隊長が深手を負ったと言う報せは、すぐに全ての隊長達に伝わった。
一番やられ方が重症だと言うことも。

一番近くにいた恋次が人を呼んだのだが、本人も原因は分からなかった。



「朽木隊長、毒でも盛られたんスかね…」

「一番真新しく口にしたのは…コレか」



主のいない隊長机には一つだけ減ったたこ焼きがそのままになっていた。
それを見た恋次がうげーと嫌そうに説明する。



「ああ…それ隊員がサシ入れた奴なんスけど、めちゃくちゃ辛いらしいですよ」

「そりゃまた朽木らしいな…で、何でソレ食ってあんなになるんだよ」



相当顔色が悪く、気持悪そうな白哉の表情を思い出す。
ふと、日番谷と乱菊の目が合った。
何度か乱菊の顔とたこ焼きへ視線を行き来させ。



「松本、これ食ってみろ」

「はあ!?」



さも平然と言う隊長に耳を疑う。



「この…何が入っているか分からないたこ焼きを私に食えと?」

「死にはしねえよ、朽木も生きてんだ。何かあったら名無しのとこまで運んでやっから」

「う…隊長、死んだら化けて出てやる…」

「だから死なねえって」



隊長命令となれば覚悟を決めたのか、八個入り(今は七個)の箱を片手に持って、一つをつまようじで刺した。



「…っ!」



意を決して口に入れた瞬間、回りからおおーっと歓声が。
一方食べた乱菊は。



「ふわっ!ちょ、何コレ!」

「何だっ?」

「………甘ッッッ!」



驚きの一言を。



「甘い?」

「これたこ焼きじゃないって絶対!そう…何か例えると…雛森!」

「はっはい!」



あんたも食え、と差し出されたたこ焼きを恐る恐る口に運んだ雛森。
乱菊相手にはとても逆らえなかったのでかなり渋々だったが、その瞬間、ほうけたような顔をして。



「…これ、たったこ焼きじゃないぃっ」

「あ?タコが入ってないとかか?」



ブンブンと勢い良くかぶりを振って。



「だ、だってコレ衣がプチシューだしソースがチョコレートだし青のりが抹茶だし紅しょうがが刻んだサクランボなんだもんっっ!」

「あー、甘ッ!隊長お茶下さい!」



見事なたこ焼きトラップ。
と言うかダミー。
仕方なしに日番谷が渡したお茶を二人共一気に飲み干す。



「普通においしいはおいしいけど、甘党じゃなきゃ耐えれないわ…」

「しかも辛いって思ってたんなら結構なショックだろうな…」



手のこんだ偽たこ焼きを食べた白哉は、当分医務室からでてこなかった。



【被害者10 食べ物をダミーにされる】







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