前髪で遮られた視界は灰色だった。
オレの目に映る色のあるものは。
血と。
お前だけ。
二人ぼっちで
毒入りスイーツ
退屈退屈。
毎日退屈。
やることなし、することなし。
「王子、お暇でしたら御相手を…」
「いらね。消えて」
来るのは大臣達がご機嫌とりのためだけ。
うぜ、オレと兄貴の見分けもつかないくせに。
兄貴は社交、王は酒、王妃は美容。
別にあいつらと遊んでやろーなんてこれっぽっちも思わないけど、オレだけこんな退屈ってのはかなり、ムカつく。
ああ。
何か面白いこと、起きねーかな。
生まれたときから兄貴とはほとんど一緒に育てられたけど一番の違いは多分コレ。
オレは兄貴みたいにどっかの国と仲良くしようとか、どっかの王に気に入られようとか全然思わないし。
そんな練習もぜってーしたくない。
「王子、何かゲームでも…」
「いらねっつったしょ、お前らとやっても面白くないし」
「ですが……」
「じゃあ、オレの名前言ってみてよ」
そう聞くとほら、何も言えなくなるんじゃん。
オレか兄貴か分かんないでよく話しかけられるよ、ある意味スゲー。
すごすご尻尾まいて部屋から出てった大臣達。
どうせまた明日も来んだろうな、あいつらは黙って王の代わりに政治やってりゃ良いのに。
「…退屈」
どいつもこいつもつまんねー。
ちょっとナイフ振り回しただけで白い目で見るし。
来る日も来る日も一日中ひとりっきりで城内を歩き回ってそれで終わり。
目に入る前髪の金色はしっかりと見えるのに。
オレの世界には灰色以外の色がない。
戻る