広い広いベルフェゴール様のお部屋。
私はその中にある大きい飾り棚の高そうなカップのコレクションを一つ一つ磨いています。
ベルフェゴール様はすぐ近くにあるアンティーク調のソファにごろり。
「ベルフェゴール様、もう許してさしあげたらいかがです?」
「やーだね」
貴方と
毒入りティーパーティ
今日のベルフェゴール様は機嫌がよろしくない。
というよりはどこかすねた子供のようにしていらっしゃる。
それというのもつい先日、王と喧嘩をしたからなのですが。
元々ただ一人の後継ぎであるベルフェゴール様。
ヴァリアーなんてマフィアに入ってほしいわけもない王様とお妃のお気持ちも分かりますが、私は今まで城内に引き込もっていなければならなかったベルフェゴール様のことを考えるとこのままが良いと思います。
定期的にお城には帰ってきてくださるのですし。
ところが、今回のモメごとの原因はヴァリアーのことではなく。
私にあるのでございます。
「王がリラにあんま近付くなってさ。ししっ、笑えねえ冗談」
そう。
幼い頃から仕えさせていただいている私ですが、ベルフェゴール様とずいぶん近しい位置にいることが最近王の目に止まったらしく。
ベルフェゴール様から離そうとなさっているらしいのです。
「私はまだ小娘ですから、王とお妃から見れば至らない所もあるのでしょう」
「あいつらだってジジィとババァじゃん。目元の皺はごまかせねっしょ」
「化粧水を肉の茹で汁とすり替えたことに気付かないあたり、あまり効果も無かったようですしね」
カチャン、と七個目のカップを磨き終わり棚に戻して、残り六個。
何はともあれそんな王とお妃のほとんど強制的な助言を「やだ。」の一言で切り捨てられたベルフェゴール様は、あの方達を敵に回したも同じ。
言い争いというよりはイヤミの言い合いのような『冷戦』を繰り広げて今、現在の状況に繋がります。
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