一人がけの椅子はザンの物。
椅子の右側にあるソファは鮫の場所。
椅子の左側にあるソファは猫の場所。
今日も何かが音を立てながらスクアーロへ飛んでいく。
ゴォンッ!


「うぉおお!?何しやがんだぁてめぇ!」

「後頭部だから10点」

「…ちっ」


普段は物静かなヴァリアー本部の談話室がもっぱら私達の居座っている場所、まあザンくらいの権力を持つ人が居座るって言うのも何だか似合わない気もするけれど。
どうやら投げたらしい大きな灰皿(誰も煙草は吸わないから多分スクアーロへの投げつけ用)がグワングワン音を立てて床に転がっていた。
別にいつものザンの趣味なのでさして気にせず私も自分の趣味に体を戻す。
同僚が虐待されてんだろうがぁとか何回か助けを求められたこともあるけれど別に私がされてるわけじゃないから気にしない、それ以前に痛いのは私だって嫌だ。


多分ヴァリアーのボスことザンザス様と一緒にいる時間が長いのはうぬぼれでも何でもなく現実に私達二人だと思う。
全員同格と言うヴァリアー幹部でさえ私とスクアーロを『側近』と呼ぶのだし。
後輩と言う形とは言え学生の頃から一緒にいたせいか年上のスクアーロを無下に扱うのもザンザスをザンと呼ぶのも大した抵抗はない。

ガシャンッと言う何かが割れた音といってぇ!と言う悲痛な叫び声が同時に聞こえて読んでいた本から顔を上げると、ザンがこれならどうだ的な顔でこっちを見ていた。
顎で示す先にいるのは弁慶の泣き所を抱えて悶えているスクアーロ。


「スネだから80点」

「よし」

「よしじゃねええ!」


分かるよスクアーロ、スネは痛いよね。
なんて視線だけで哀れむとほぼ私と正反対な性格をしているザンの右腕はぶつけられた花瓶の破片を払いながらちょっと怒っていた。




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bkm
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