暗殺任務に関しては最高峰とうたわれる僕らヴァリアーでも、避けようのない問題というものは存在する。
一言で表すなら、そう。



「どうしてもこれだけじゃ足りないわねえ…」

「あと一人でも多ければ成功率が90%に上がるのだがな…」

「うぉいマーモン、お前もなんか案考えろぉ」



人材不足、だろう。




僕らヴァリアー幹部は腕は確かでも、あまりそれに見合うだけの部下がいない。
いたとしてもその時々の任務に向いていたりいなかったり、安定した人材を持っているとは言い難い。

そんな時に大人数を必要とする任務を与えられると、こうしたどうにもならない状況に陥るわけで。



「ボス、どうする?」



僕の近くに座っていたボスを仰ぐと、ボスはどこか神妙に持っていたグラスを置いて。



「…あいつを呼ぶか」



その言葉に全員が生唾を飲む。
あいつ、というのはいわゆる「助っ人」。
そして僕らはその助っ人の特殊性を嫌というほど知っている。

ボスが携帯でどこかと連絡を取ってから数分後、盛大に広間の扉を開け放って一人の少女が飛び込んできた。
肩から学生鞄をかけた女の子。



「来たか」

「そりゃ来るよ…」



周りの黒ずくめの男達に物怖じもせず、走ってきたのか切らした息を整える。
動けないでいる僕らを尻目にスタスタ室内に入ってきて、ボスから書類を受け取った。



「今回は?どこ?」

「この建物の一階全体だ」

「…あーハイハイ。ここね、了解」

「死角に気をつけろ」

「ん。あ、そのマシンガン一つ貸して」

「おら」

「どーも。じゃあ下見に行ってきまーす」



さらっとボスの武器の片割れを借りて、何事もなかったかのようにスタコラ部屋から出て行った。
ボスはボスでさして気にもせずにまた酒を飲みだしている。

人出が足りない問題は解決したけど、あの子が来るたび僕らの中にはまた新たな問題が浮上するから困る。



「…ねえ、真面目にあの子誰?」

「あんな子どこで見つけてきたのかしらね」

「一体ボスの何なのだ…!」



そう。
彼女はいつのまにかヴァリアーの中に混ざっていて、いつのまにかいなくなっているいわゆる『限りなく僕らに近い一般人』。

普段は普通に学校生活を送っているらしいけど、ボスが呼びだすと人手が足りない任務を手伝ってくれる。





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bkm
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