時間は夜、場所は広い広い部屋。
大きなベッドの上で正座している私。
向かいで同じように正座している(させた)ザンザスさん。



「…何だ話って」

「何だと思います?」

「足が痛ぇ」

「全く予想がつかないということは分かりました」



結構な身長差のため少し顔を見上げながら、私は静かに言いました。



「ザンザスさんは私離れしなければいけません」



これはかなり、心からの決意で言ったつもりだったのですが、昔からお慕いしているザンザスさんは小さくそうか…と呟きました。



「分かって下さいました?」

「ああ。じゃあもう寝るから服脱がせろ」

あなた聞いてなかったでしょう。





そして時は流れて数日後の夜。
ドドドドドと迫り来る恐ろしい足音から必死の走りで私は逃げ回っていました。
私離れ宣言からはや幾日、どうにか聞いてもらえたは良いもののガンとして受け入れようとはしてくれません。
それならばと実力行使でザンザスさんから離れようとしたらこの有り様ですよ。
さすがに炎の銃は使っていないものの、本気で走る男性から逃げるのはかなり根気のいること。
幹部のどなたかに事情を説明してかくまっていただこうと携帯を取り出すと。



着信:53件



何の呪い?

朝方から消音モードにしていて全く気づきませんでしたが、見事に全てがザンザスさんからのもの。
消音モードを解除すると、現に逃げている今もまた着信が入って来ました。
ああ、ザンザスさんが一人で電話をかけられるように…いえいえそんな感動しているわけにはいきません。



「はい、名無しです」

『てめぇ今どこだ』

「ザンザスさんが追いかけている遥か前方です」

『戻ってこい』

「駄目です、私離れを受け入れていただくまでは」

『…何すりゃ良い』

「一人で朝起きたり飲み物をついだり服を着替えたりヘリに乗ったり電話をかけたり果物を剥いたり夜眠ったりしてください」

『無理だ』

即答ですか。



…いけません、これで24歳はいけません。
ヤバすぎます。
赤ちゃんのマーモンさんですら今言ったことは全て自分でされるのに。




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bkm
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