ザンザスを恋人に持って分かったのはあの男が不思議なくらい不器用なこと。
不器用すぎて自分でも気づかなくて周りからもただのポリシーに見えてしまうくらいの不器用。
特に私に関しては。
少し前まで優しさだの愛だのを知らない人だったから無理もないかも知れないけれど。
相手が欲しがる物を満足するまで与えるのがザンザスなりの愛情表現なら私は最上級のそれをもらっていることになる。
それは、うん、本当に嬉しい。
だけど贈り物で圧死だなんて悲しすぎる。
偉大なボンゴレ九代目、ザンザスを乱暴でも不器用でもどんな風に育てたって良いから金の価値と使い方だけは教えて欲しかった。
考えている内に時計の針は深夜を過ぎる、このままでは圧死を考えなければいけない。
…どうしよう。
そもそもザンザスは何だってこんなにあげることにこだわるんだろう。
これでも私も暗殺者の端くれで誉れ高いザンザスの恋人、それくらい気づかなくちゃその名が泣く。
なんだろう、あの不器用男の行動の意味は。
誰かが恋と暗殺は表裏一体とか言っていたけどどういう意味かまでは教えてもらわなかった、手中にした方が勝ちとでも言うのかな。
ゴロゴロ転がりながらそこまで考えて、ふと思い出した。
何かを言いたげに私を見て結局言わないザンザスの変わった仕草。
私の欲しい物を聞くのはいつもそれを見せた後だ。
「…あの不器用男」
ようやく分かった。
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bkm