右腕と左側は反対の場所にある。
それを体言するみたいにスクアーロはうるさい上に分かりやすい、私は喋らない上にあまり表情がでない。
元から口数が多い方ではないしザンも口達者な奴は好きじゃないから気にしたこともない。
一度スクアーロに「お前は頭でごちゃごちゃ考えてんのに喋らねえよなぁ…」とかボヤかれて、うん、あれは的を射ていた。


スクアーロが飛び散った破片が髪に紛れ込んだらしくて大変そうにしていたからしょうがなくチリトリで床に散らばった物は取ってあげた。
このためだけに花も何も刺していない花瓶を机の上に置いておくんだからザンもマメと言えばマメだ。
特に何も変わらない一日。
端から見れば何の生産性もなく退屈な日常に見えるのかも知れないけれど私は世界の中でこんな一日が大好きだ。
もちろん誰も知らない、顔に出したこともない。


「スクアーロ」

「何だぁ?」

「楽しいね」


珍しい私からの発言に加えて、一年に一度言うか言わないかの感情を表す言葉にスクアーロどころかザンまで顔を上げたけどそれ以上のことは言わない。
特に言うこともないし。
くるりと背を向けてチリトリをしまうと背後から何かの気配を感じて軽く右に避けた。
途端にすぐ横をザンが投げたテキーラのビンが物凄い速さで通り抜けて壁で果てた。
ザンがスクアーロばかり狙う理由は簡単。
私に当たらないから。


「久しぶりに変なことをぬかすから当たると思ったんだがな」

「うん、残念」


割れてこぼれた酒は掃除夫に任せることにして私はいつもの左側にあるソファに戻った。
熱くも冷たくもない場所。
水であれ何であれぬるま湯が一番心地好い、要するに中間、別の言い方でどっちつかず。
そんなことを言ったらぬるいだの腑抜けだのの言葉が嫌いなこの二人は絶対声を揃えて否定するんだろうけど。





思慮深い猫の趣味




(それは終わりが来るまでこの生ぬるい日常に浸り続けることです)




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