到底一般人とは思えない会話だったけど、ベルに対する一番良い距離感を名無しは保っていた。
もちろんルッスーリアもすぐ輪に入って名無しとワイドショー関連の話ばかりしていた。

スクアーロとは一方的な仲良しだった。



「うぉっ、来んなぁ名無し!」

「髪触らせてー」

「お前は三つ編みにしやがるから嫌だぁ!」



とか何とか言ってても、逃げるのが面倒くさい日は好きなように編ませてたくせに。
素直じゃないよ。

レヴィとはボスをめぐっていつまでも対立のまま。
だけど結局は名無しが折れた気がする(名無しの方が大人だったのかもしれない)。



「マーモン私の子供になんない?」

「ならない」

「ちょっとは考えてよ、私可能性低すぎるんだから」

「あら、そんなに?」

「うん、最長で二十歳までだから必然的にねー」



最近は頻繁にこちらにやってくるようになった。
魔法使いはいつも大げさにドアを開けて。
いつもの鞄と共にやってきて。
いつも突拍子のないことばかり言って。
いつも魔法をかけられたように僕らはそれに付き合わされて。
いつも何だか騒がしくて落ち着かない。

でも不思議とそんな日々が。
嫌いじゃなかったよ。






「……嘘っしょ?」



だけどその日は突然やってきた。
その言葉は僕が言いたいくらいに。



「…本当だよベル」



魔法使いは死んだ。
昨日から丸一日ボスが自分の部屋から出てこなかったからルッスーリアとレヴィが心配していたんだけど、今日部屋から出てきたボスはいつも通り大して変わった所なんて無かった。

だから誰も気づかずに話題は彼女のことに移る。



「ボス、今日は名無しちゃん来ないのかしら?」

「ああ、あいつなら死んだ」



魔法使いは二十歳に届かずに死んだ。
元から『長くは生きられない』という条件だったのだから、不思議なことじゃない。
それを知っていたからルッスーリアや僕はまだ受け入れることができたけど。

…ベルは。



「何で?あいつ最近まですっげー元気だったじゃん」

「ベル…」

「血を見た俺とやってみたいとかさ、生意気なこと言ってたじゃん。ワケ、わかんねー」



ベルは天の邪鬼だけど、僕らの中で一番名無しを気に入っていたのはやっぱり年の近いベルだったんだと思う。


 


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bkm
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