「悪いことというより悪い点が…」

『何だ』

「何だって…私がいないと羽が付けられなかったり嫌いな食べ物を残したり時計持たないから時間が分からなかったりブーツの紐が結べなかったり暗い森歩けなかったり誰もいない所に向かって「てててめェがそこにいんのは分かってんだぞ!」って意味もなく脅しちゃったりそれから…」

『すいませんもう良いです』



あ、そうですか。
それにしても声のトーンが低いながらにどこか少し悲しげです。
捨てられた仔猫のようで…いえ獣のように聞こえます。

ザンザスさんを悲しませたいわけではないんです。
ただあまり私がお側にくっついていると、そのせいで周りに何かを言われてしまいそうで…。



「…ザンザスさん、私は――」



ブチッ



…ブチ?
あれ、携帯が繋がらなくなってる…。



「ゔぉ゙おい、何かあいつアタフタしてるが何かあったかぁ?」



言われて見ると、画面の中で携帯をこの世の終わりのように見つめている姿が。



充電切れですね。いつも私が頃合いを見計らって充電してたので」

「しょぼすぎだろぉ…」



ただでさえ朝から何十回もかけていたのに、当然といえば当然ですが。
繋がらなくなったため携帯を閉じてどうしようかと考えていると、隣でスクアーロさんが小さく笑いました。



「三つ子の魂百までっつうから、あの甘え癖は一生治らねえんじゃねえかぁ?仕方ねえからお前が一生近くにいてやれぇ」

「…良いんでしょうか」

「良くなかったらここまで連れ添わねえだろぉ」



俺たちも慣れてるしなぁ、とニッと笑ってくださいました。
慣れていると言っていただけたので試しに私が日常的にやっていることをほんの一部お話してみると。



「あー…その、あれだぁ。時々は厳しくしてやっても良いぞぉ…」

「分かりました」



置いて下さったことに礼を言って廊下にいるであろうザンザスさんの所に行きました。
ああ、案の定まだ携帯を持ったまま立っています。
物凄く変な人だ…。



「ザンザスさん」

「!」



突然現れた私を見て、一瞬驚いたのか何をしようかと手を動かした挙げ句。
ガシッととりあえず私が逃げないように両肩を掴みました。
…そうですね、大事です。




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bkm
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