軽く挨拶をして一方的に電話を切ると、前方からスクアーロさんがやってきました。
スクアーロさんはザンザスさんと長い付き合いの方なので、すぐに状況を理解して下さったようです。
部屋にかくまってくれました。


向かいに座って入れていただいたお茶を少し飲むと、ようやく胸が落ち着きます。
ご飯も食べていませんでしたよ私…。



「どこまで話は進んだんだぁ?」

「こちらから私離れを提案したところで盛大に嫌がられています」

「まぁあいつはお前にベッタリだからなぁ…。仕方ねえだろ、ガキの頃からの付き合いだ」



そう仰る通り、私はザンザスさんが小さい頃からよくお世話をしていました。
私の方がいくらも年下ではありましたが、ザンザスさんが九代目のお家に来た時から遊び相手になるはずが、なぜか世話係になっていました。



「お世話、しすぎたんでしょうか…」

「判断が難しいところだなぁ…」



とりあえず今ザンザスさんがどこにいるのかを知ろうと、部屋にあるモニターで探してみることになりました。
これは幹部の皆さんの部屋に一つずつあるのですが、ザンザスさんの場合はいつも私がしているのでもう何だか慣れた感じです。

ボタンで一場面ごとに画面を切り替えていくと、その内廊下で立ちすくんでいる姿を発見しました。
…って、あれはまさか…



「…あのですね、スクアーロさん」

「どうしたぁ?」

「実は私、先ほどまでザンザスさんと電話しながら逃げていて、一方的に切ってしまったのですが」

「おう」

「…あの方、その位置から動いていません」

「はあぁ!?」



あああ良く見たら携帯見つめたまま固まっていらっしゃる。
それもそうですよね、そのはずです。



「な、何であんな固まってんだぁ?」

「昔から私が一方的に切るなんて一度もしたことがないんです…」

「それだけかよおぉ!」



いつもザンザスさんの話を聞いてザンザスさんが切りたい時に切っているので、もしかしたらショックだったのかもしれません。
スクアーロさんにも言われて慌ててこちらから電話をかけました。



「あ、あの…ザンザスさん?」

『…名無し』

「はい」

『…俺、そんなに悪いことしたか…?』



うわあ……。
メチャクチャ気にしていらっしゃる。

たかだか電話を先に切られたくらいで物凄く考えこんでいらっしゃる。




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bkm
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