轟くアクセルとブレーキ音。
風を切るような速さで走り抜けるバイクを操縦する私。
まあ、ゲームなんですけど。
「…あれ、ベルもうゴールしたの…」
「とっくの昔にしたけど…何、コース走ってんの名無しだけじゃね…」
「私もう何周もしてるのに何だこれ…バグか」
話は変わるけど現在のイタリアはずいぶんとひどい猛暑で、同時にアジト内の八割のクーラーがダウンという最悪の状況になっていた。
テレビをつけてもどこもこの猛暑のことしかやってないから、いっそスカッとレーシングゲームでもしようとベルの部屋に滞在してる所だったんだけど。
「んーこの暑さでゲーム機もやられたか…」
「…あ…ねぇ、ねぇ名無し」
「何?」
「…名無し逆走してね?」
「……………あ」
「……あーあ」
やられてるのは私達の頭だったらしい。
*本日ハ非情ニ晴天デス*
とりあえずゲーム機もテレビも異様に熱を帯びてきたので一旦触れないでおくことにした。
ゲーム機の熱で目玉焼きが焼けそうだと言うと、ベルが何の目玉?と聞いてきた辺りで私達は超えちゃいけないラインを超えているんだろう。
「どっか涼しい所行かなきゃダメだ…クーラー無事なのってどこだっけ」
「…厨房の冷凍庫とマーモンの地下室と、あーあとボスの部屋?」
「アジト内は無理か…」
ボスの部屋なら押しかけられるんだけど、当人が会議だか何だかで留守だから鍵が開いてない。
マーモンの地下室はまあ、プライベートな研究だから触れたらいけないと言うことで。
「………よし。ベル、コンビニ行こう」
「うえー外暑いっしょ…」
「まあそうだけど…最近のコンビニはクレジットカード使えるらしいよ」
「行く」
ベルが本当は何を懸念してたかなんてお見通しだ。
財布にお金を入れずにカードばかり持ち歩くのが災いして、この間めちゃくちゃコンビニで困ってたことを私はしっかり記憶していますよ。
とにかくなるべく軽装になるよう準備して、携帯と財布だけ持って部屋を出た。
ボス以外でスクアーロは剣の練習、マーモンは地下室、ルッスーリアは任務、レヴィは部屋で調べ物をしていたから、アジトの中はがらんとして人の気配がない。
そんな時。
「ウイィィン…」
「わ、びっくりしたモスカ。何してんの」
「……イィィ」
玄関前のロビーをモスカがうろうろと徘徊していた。
いつもは大人しくメンテナンス部屋かボスの部屋前で待機してるのに。
「ウイィン…ィン…」
「え、動かなきゃいけない?何で?」
「あー…何かこの前レヴィがソーラー機能取り付けたとか言ってた。けど、猛暑すげーから燃料出来すぎて消費しきれねーとか言ってたな」
「モスカ…!なんて哀れな…!」
いいよ、そんな寂しくうろうろしなくていいよ。
一緒にコンビニ行こうよ。
こうして三人でダラダラと向かうことにした。
ちなみにソーラー機能は引きちぎった。
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