『!
おい!名無しかぁ!?』
「あいそうです、ちょっとヘコんでる名無しです。そしてちょっと声近いです」
『まだ血ぃ抜かれてねえだろうなぁ!?』
「何でそれを…!
ってスクアーロどこからかけてるのさ、妙に電波が…」
『お前がいる場所の屋上だぁ!』
「…へ?」
耳から携帯を引き離しても聞こえる声から出た言葉に、私とベル兄の声が重なった。
『お前がベルの兄貴に連れてかれたっつうからあれだぁ…その何だかんだで迎えに来てんだぁ!』
「何か色々はしょった!
え、ベル兄ここ城なのに屋上とかあんの?」
「なきゃヘリ止まれねーっしょ」
「変なところで近代的だな…もしもしスクアーロ!?
今屋敷中やばいSPがうじゃうじゃしてるからまだ入らない方が…」
『ボスがもう行っちまったぜぇ!』
「ええええめっちゃマッチョなSPばっかなのに!?」
『うぉ!?今ルッスーリアも飛び出してったぜぇ!』
「しまったああ!」
後悔のシャウトをした瞬間、地響きのような揺れが部屋全体を襲った。
危うくソファにしがみついてバランスを崩さずにいられたけど、向こうのヘリも揺れたらしくスクアーロとの通信が途絶えた。
地震の揺れ、じゃない。
スクアーロが言ってたことは確か…
「…ボスだ!
ボスが何か壊してる!」
「げ、侵入してきてんの?」
「侵入っていうか突撃っていうか……いやでも城壊したところでどうにかなるもんじゃないし……」
もしスクアーロ達がベルにここの情報を聞いてるんだとしたら、ボスが真っ先に排除しようとするのは。
一人しかいない。
「…お妃が危ない!」
―ヘリ側―
「ちっ、名無しとの電話切っちまったぁ…そっちはどうだぁマーモン」
「ボスとルッスーリアの連絡はまだ取れないよ、僕はヘリに侵入してこようとしてるSPを排除してる。あと雷使ってSP倒そうとしてるレヴィを抑えている所だね」
「そのまま念力頼むぜぇ、絶対ぇヘリに雷落ちるからなぁ。
ベルはどうだぁ?」
「城の警備システムにハッキングした」
そう言って一つのキーを押すと、ヘリ内のいくつかのモニターに城の内部が映し出された。
城の広さとモニターの数が釣り合わないので、城中の音声も流して探り出す。
「よぉし、名無し達探すぞぉ。
城中の音声の中からじゃあ見つけにくいだろうが…」
『にぎゃああこっち来んなこっち来んなってえええ!』
「…あっさり見つかったね。」
「音声マイク万々歳だなぁ…けどルッスーリアとボスは……」
『私の可愛いコレクションになるのはどなたかしら〜!?』
『ぎゃああああ!』
「はいハッケーン。」
「名無しは一階食事の間、ルッスーリアは二階バルコニーだね。モニターに映したよ」
「分かりやすい奴らだなぁ……」
とりあえず逃亡している場所が分かったので、お楽しみ中かつ武器無しで戦えるルッスーリアはともかく、行き止まりの食事の間に追い詰められた名無しの方へ連絡を取った。
『はい!?もしもし!?』
「俺だぁ!
お前武器持ってねえのかぁ!?」
『風呂上りに携帯持ってただけで奇跡だよ!』
「カメラで見る限りそこにいるSP以外は周りにいねぇ、何とかそいつら倒せ!」
『武器無しでこの人数はさすがに…』
それでも何とか十数人の攻撃をかわして広い室内を逃げ回っている。
すべき助言に困っているスクアーロから、「ちょっと貸して」とマーモンが携帯を手に取った。
「名無し、名無し」
『あ、マーモン!何!?』
「そのSP達さっき厨房で野菜踏みにじって名無し追ってたよ」
『生きて帰れると思うなよゴルアアァア!』「おーすっげバーサーカーモード」
「見て、皿だけで10人倒したよ」
「SP濡れ衣じゃねえか……」
―4階廊下―
再び繋がった携帯でスクアーロの指示を受けながら廊下を大疾走する私。
さっき目に見えない力か何かが働いてだいぶSPを倒せたので、今のところ追われてはいない。
どうやらその分屋上に突撃されているらしく、スクアーロ達はヘリを守るためにそこから離れられないらしい。
「4階についた!」
『よし、そしたらその廊下を突きあたりまで走って…』
言われた通りT字路のような廊下を突きあたりまで走って、左右に分かれている廊下のどちらに向かえば良いのか口を開きかけたとき。
私の手から携帯が跳ね飛んだ。
同時に聞こえた発砲音に振り返ると、こちらへ銃を向けた二人のSP。
その後ろで微笑んでいる、王妃。
「やっと見つけたわ、名無しさん」
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