「じゃ、じゃあやりますよ?」
「オッケー」
「…何で思い切り銃口を向けてるんですか?」
「こういう除霊のやり方なのさ」
その内ステンバーイ…ステンバーイ…と呟きだしたので、意を決してドアの鍵を開けた。
ガチャリ、と思いの外大きな音が響いて、すぐさま後ずさる。
じれったいほどゆっくりゆっくり、扉がこちら側に開かれて。
前見た時よりもさらに血まみれなあの人が姿を見せた。
「あ゙?……ししっ、んなとこにいたんじゃん」
「ひっ゙…」
また吸い寄せられるようにその手にあるナイフに視線が固定されて、向こうが進んだ一歩分の距離を詰められた時。
ドォンッ!!
「って!!」
空気を揺らすような銃の音と同時に、弾かれたようにナイフの人がその場に倒れた。
「ビューティフォー…っと。あー良かった気取られなくて」
「う、撃っちゃったんですか!?」
「大丈夫大丈夫、ゴム弾だから。手伝ってくれてありがとね。ベールー朝だー起きろー」
思い切り大嘘をついて倒れたナイフの人を揺さぶると、多少痛そうな声を出してむっくり起き上がった。
とっさにお姉さんの後ろへ隠れる。
「…何か頭いてー…ってうわ俺血まみれじゃん。ここどこ?」
「任務先の屋敷の二階、潜入初っぱなから血ぃみちゃったんだよベル」
「あー…マジで?」
ちらっとナイフの人が顔をこちらに向けた。
思わず体が跳ねたけど、その人は別段何をするわけでもなく。
「…そいつターゲット?」
「そ、ご息女のアリシア」
「何だ任務完了してんじゃん、つまんねー」
普通だった。
別に興味も何も持たずにナイフを服のどこかにしまってる。
こう見るとお姉さんと同じくらいのお兄さんだ。
…本当に、悪魔につかれてたの?
「それがもう一階上に幹部クラスがごちゃっといるらしいよ」
「マジ?それ早く言えって。うしし♪」
「さーてもう一仕事かあ…アリー、また手伝ってほしいんだけど」
「う、うん。何でも言って」
するとお姉さんは良かった、と笑って。
「全身全霊で私にしがみついたままでいて」
キィンキィンキィン!「うしししっ、何これ止まって見えんだけど」
「一人、二人、三人、と。ベルもうちょい右走って」
「こ…怖い怖い怖い……っ!」
あちこちから金属がぶつかり合う音、銃弾が飛び交う音、たくさんの足音と悲鳴。
片腕で私を抱いて、片腕で銃を撃ちまくっているお姉さんの体にしがみつき、私達は廊下を全速力で疾走していた。
後ろからは誰も来ないので時々振り向いて前を見ると、お兄さんがたくさんのナイフで前から来る人をやっつけて、後ろを走るお姉さんがお兄さんの倒し損じを撃っていた。
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