「「あっっっつ……」」
外は想像以上の暑さだった。
室内の方が何だかんだで暑いのだろうと思っていたけど、ジリジリと熱されているアスファルトを見ただけで心が折れそうだ。
正直コンビニは300mも離れてないというのに。
「このアスファルトでも目玉焼きが焼けそうだねベル…」
「あー…右目とかな…」
状況は深刻です。
多分ベルはもう私の見えない物が見えだしてると思う。
本来暑さに強くないし。
「モスカごめん、ちょっと影貸して…」
「キュイン」
巨体なモスカから生まれた影にベルと入って、どうにか直射日光をやり過ごしながら歩いた。
正直距離が距離だからコンビニはもう遠くに見えているんだけど、進んでいる気がしない。
にゃーにゃー
「ん、何か猫の声が聞こえな……あれ?ベル?」
影に張りついていたベルの姿が消えたと思ったら、道の垣根の影にたむろしている猫の群の中にその姿を見つけた。
そう言えば前犬派か猫派かを皆に聞いたとき、ベルはかなりの猫派だった気がする。
「ししっ、すげー何でこんなにいんの」
「あー…猫って涼しい所を見つけるとか言うし、ここ涼しいんだろう」
確かに妙に冷えた風が流れていて、ここだけはアスファルトも微かに冷たい。
ヴァリアーは8ヶ国語喋れる人間よりこういう特殊技能持ちを集めた方がいいんでないか。
「猫飼いてー」
「飼えたらねー」
「ボスとか懐柔出来ねーかな、名無しと俺で頼めば楽勝じゃね?」
ああうん、多分誰より早く陥落できる気がする。
何だかんだで私達に甘いし。
でも本人気づいてないのか…動物を飼えない一番の理由が……。
「お、すげーこいつ猫パンチしてくんだけど」
「っさーもうコンビニ行こうねーベル!」
万が一でもベルを流血させる可能性があるからだということに。
これのおかげで我がアジトはペット禁制。
犬猫はおろかハムスターさえ駄目で、ギリギリOKなラインだった金魚もベルが「ならピラニア飼いてー」とか言い出したのでアウトになった。
「なら」って何だ「なら」って。
金魚=ピラニアってどうやったら出てくる。
ちえー、と渋るベルを引きずってさっさと目的地のコンビニに駆け込んだ。
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