「…ん?何か布の塊が…」
山を崩していると中枢からもみくちゃにされた服が出てきた。
何着かが無造作に丸まってるので一枚ずつばらしていくと。
「あー、これって…」
出てきたのはパジャマ。
無地に赤いボーダーの入った、何ともオーソドックスな品。
けれどもこの場にいる全員に見覚えがある。
「あら〜懐かしいわね」
「君まだこれ持ってたんだ」
「適当に突っ込んどいたら忘れてた」
「私もまだ持ってるなあそう言えば…」
このパジャマの由来は何年か前、ボスの真剣な一言で始まった。
―――――――…
「…パジャマ作るぞ」
「……は?」
昼寝中の私にボスが
「リゾット作るぞ」並みの気安さでそんなことを言ってきた。
談話室のソファーで眠っていたため、周りで読書なり仕事なりしていた幹部が一緒にボスを見た。
もちろん私達は今まで好きな格好で寝ていたから寝耳に水だったけど、一部の幹部を除いて、なぜボスがそんな決断を踏み切ったのかは瞬時に分かった。
「もう〜ボスったら急にどうしたのよ?」
ああこの人のネグリジェ姿が原因だ。と。
「…うん、僕は良いと思うよ」
「俺もだぁ…」
「私も部下がやられたしなあ…」
「うーわそんなにすげーんだ…」
「俺も大賛成ですボス!」
「よし」
「あらん、皆が良いなら良いけど…ねえどうして皆私から目を反らすのかしら?」
そんなこんなで幹部用パジャマが作られた。
さすがに寝るだけの服に凝っても仕方がないのと、被害を広めないために早急に作る必要があって、白地に縦線模様の超オーソドックスパジャマに決定した。
ただしベルだけ拒絶反応を示したかはただ一人横縞の物を作った。
案外あっさりと出来たからすんなり皆でおそろいのパジャマを着ることになったのだけど、一つだけ問題が生じたとするならば。
「ふわ…あ、おはようスクアーロ…」
「名無しー?私よん?」
「あれ、スクアーロからルッスーリアの声が…」
私が凄まじく人違いをするようになったことかな。私は生来目覚めが悪いので早朝となれば常に上瞼と下瞼が結婚状態。
加えて皆同じパジャマ、仕方がないというものだ。
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