「…やっぱりねー」
強制侵入を果たしたベルの部屋は、散々たる光景が広がっていた。
まず足の踏み場も無いほどの衣類で床中が埋め尽くされていて、あとあらゆる家具の上に衣類が散らばって、加えて洗面所まで衣類が…ああうん衣類ありすぎじゃね?
「ベル、君が片づけられないのは周知の事実だけど…」
「王子にんなスキルいらねーし」
だから嫌だったんだと言わんばかりの声を出すも、ルッスーリアに担がれている姿では何の効果もない。
聞けば朝普通に服を選んでいたらこうなったらしい。
それだけで何でこんなに散らかるの?
デートの前日に候補の服をベッドに乗せてどっちにするか悩む乙女のレベル100なの?
「さすがにこれだけあったら隠れるのに邪魔になるかしら」
「そうだねえ。あと目が痛い、
ボーダーばっかで目がチッカチカする」
隊服以外に無地の物とかを持たないんだろうかこの王子は。
「ベル、君の部屋のクローゼットは?」
「向こうの壁一面だけど」
「うわ、収納多くて良いな。じゃあとりあえずそこら辺りの服を一旦クローゼットにしまって……」
そうして全員で部屋奥へ振り向くと。
壁一面ぱんっっっぱんに膨張しきったクローゼットがあった。
what?「…ベル、弱小マフィアでも匿ってる?」
「ししっ、匿うくらいなら殺ってる」
だよね、ベルが生きてるものを手元に置いたりするはずがない。
じゃあ何だこの膨らみっぷり。
クローゼットの引き戸が
何これゴム?ってくらい中から反り返ってる。
「一体何が入ってるんだい?」
「べっつにー、何か知らねー間にたまってんだもん。捨てるもん選ぶのめんどくせーから放っておいたらこうなった」
「ある意味凶器よねぇ」
「ああ、この前に立たされたら私何でも自白しそう…」
恐ろしく巨大なクローゼットの、恐ろしく膨張した引き戸の前に立たされたらそれはそれは恐怖だろう。
なるほど、それで衣類がしまえないからこんなに散らばっていたわけか。
「どうせだから今中身整理しちゃおうよベル」
「うえ…マジで?」
「こんな部屋で寝てたら疲れが取れないわよ?手伝うから終わらせちゃいましょ」
「しゃーねーなー…」
はいちょっと満更でもない感じに言ったってツンデレにしか見えませんよ。
王子属性にツンデレ属性って何その王道。
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