――――――…
…おい、おい起きろ
遠くで何となくボスの声が聞こえる気がする。
けど妙に頭がはっきりしなくて、上手く聞き取れない。
起きろっつってんだろうが
いや起きろって何?私寝てんの?
じゃあもうちょっとこのままでいー
「起きろドカス!」
「うぉあ!」
突如感じた殺気に飛び起きると、今まで私の顔があった位置にクッションが弾丸のごとく飛び込んできた。
せ、セーフ…。
「なん、何て良い球なげやがるボス…」
「うるせえ、それよかてめぇ昨日の事どこまで覚えてやがる」
昨日?
昨日って私たち今遊園地のお化け屋敷に来てて…って…。
「…なんで、帰ってきてんの?」
私が飛び起きたところは、見慣れたアジトの談話室のソファ。
飛んできたクッションだってルッスーリアお手製の一品。
ほんっとフリフリ好きだなあ…これをボスが使ってたりすると笑えるから良いんだけど、いやそうじゃなくて。
「昨日の事って言ったら霊安室まで行って…私多分それから気絶しちゃってたんだと思うんだけど、ボスが運んでくれた?」
「ハッ、てめぇみてえなドカスなんざ誰が拾うか」
「じゃあボスどうやって帰ってきたの?」
「気づいたらここのソファで寝てた」
気絶してたんですね、分かります。いやでも、確実にあの記憶は夢オチに出来るようなレベルじゃない。
覚えてるもん、ボヴィとかボヴィとかボヴィとか。
係員が助けてくれたとしても私とボスを運ぶってよっぽどの力がないと駄目だし…
「ん?」
悩みながらソファによりかかったとき、私の背中で何か紙が潰れる音がした。
手探りでそれを背とソファの隙間から引っ張り出してみる。
「…………………ボス、これ」
「あ?んだそりゃ」
「『…拝啓 ザンザス様、幹部様。お出かけ先の病院内でお疲れのようでしたので、お部屋に入るのは失礼かと思い、談話室にお届けいたしました。無礼をお詫びいたします。操縦士』……」
「……」
「……」
「……あいつの給料上げてくる」
「じゃあ私御礼状書こう…」
その日から、私とボスの操縦士さんに対する態度が少しだけ変わった。
不思議がってたスクアーロ達には「命を助けてもらったことがある」とだけ言っておいた。
あながち間違いじゃないと思う。
「えーと『操縦士さんへ。深夜に遊園地まで運んでいただいた挙句、さんざん待機させておいて果てにはお化け屋敷から出られず気絶した私とボスを助けてくださってありが…』」
「おい口に出すんじゃねえ。へこむ」
fin.
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