「は、入るとなったらとりあえず気をつけて行こうねボス…」
「指図されるまでもねえ」
「あ、銃などの危険物はこちらでお預かりします」
「てめぇ俺の名のXが刻まれた銃に何触れてやが」
「すいませんお姉さんこの子照れ屋なんです」
ギイイイィィィ……
「「……」」
あまりにお約束すぎる扉の開閉音に俺も名無しも口が閉じる。
雰囲気ありすぎだろ畜生。
「…てめぇ何袖つかんでんだ」
「いいい今くらい許してボス」
「違え、俺がやろうと思ったことを先にすんじゃねえ」
「似合わないにも程があることをサラっと言わないでボス」
とりあえず進まなけりゃゴールもねえ。
腹をくくって薄暗い室内へ足を踏み入れた時。
バタンッ!
「「!」」
後ろで勢いよく閉まった扉の音に揃って肩が少し跳ねた。
互いに見て見ぬふりを試みるが、そうしようにもまず正面の直視が難しいと知る。
何で こんなに 雰囲気が ありやがる
足を踏み入れた場所はどう見ても照明の切れた病院の受付。
暗さと妙な薬臭さに加え、壁の剥がれや床に落ちた木屑、並ぶソファの傷み具合まで禍々しいにもほどがある。
見れば受付らしいカウンターの向こうに廊下が存在していた。
「す、進もうかボス」
「…ああ」
床に散らばっているものを直視しないよう何とか正面だけを見据えて進み、左右からの危険がないかは名無しが調べる。
やけに静寂なのが逆に腹立たしい、とまで考えた時。
「ボ、ス…」
「あ?」
「あれ、あれ…!」
妙に小声で袖を引っ張った先を見やると。
たった今横を通り過ぎたカウンターの中の机に、ナースがうつ伏せていた。
一瞬で体が固まった。
「うう、動くかなあれ、動くかな…」
「…ゆっくり目を戻せ、足音を立てるな」
「う、うん…でも動いたらボス走ってよ、足もつれて転ばないでよ」
「保証はしねえ」
「えええそこはしないとボス的にどう」
「おぎゃぐざまあああああああ!」
「「ぎゃああああああ!」」
動きやがった、今まで伏せていたとは思えねえ俊敏な動きで立ち上がりやがった。
待て何追って来てんだてめぇぶっ飛ばすぞ。
「ちょおお早い!あのナース早い!どうすんのボス!」
「追い返せ!」
「何だと!?」
「ボヴぃいざまおまだぜじまじだああああ!」
「誰だああああ!」
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