「…と、こんなところか」
おぼろげながらに語ってやったが、見ると名無しが口を開けたまま固まってやがる。
何度か殴るとようやく気がついた。
「…えええ嘘お!何その壮大な一代記!フィクションだよね!?」
「まあ2割は脚色だな。」
「あ、なんだそっか…ええ8割本当なん!?ちょっとそれもう少し詳しく…」
「おら地上ついたぞ」
「くそおおおおお!」
悔しそうに叫んでいる名無しの首根っこを掴んでさっさと狭い室内から出た。
大人しくなるまでこうして引きずってやろうと思ったが、いつまでも大人しくならねえのでこのまま歩き続けた。
「おい次は何だ」
「操縦士……ああ、次はボスどっか決めていいよ」
俺に引きずられながら園内の見取り図を手渡してきた。
決定権を与えられようが何がどんな物かも分からねえのに決めようがあるか。
まあ近くにあるものを適当に言やいいだろ。
「このメリーゴーランドってのは何だ」
「…………制限年齢が15歳までだったかなー」
「そうか」
名無しを引きずりながら歩いている方向にあるアトラクションを見取り図内で探すと、近くにあるのはそれぐらいだったが…。
「あと近ぇのは…オバケヤシキか」
その瞬間、あからさまに名無しがビクッとしやがった。
間違いない、掴んでいる俺の腕まで揺れた。
「何なんだ、オバケヤシキってのは」
「えーと、ゴーストハウスっていうか、ちょっとスリリングなアトラクションっていうか、ううんあんまり面白くないから別なところの方がいいと思うよ、思います、思ってください」
「てめぇ怖えのか」
「正直に申し上げるとそうでーす…」
「…ここ行くぞ」
「え、ええええ何で!?何でこの反応を見たというのに決断を!?」
「俺だけが度肝抜かされんのは理不尽だ」
「ジェットコースターと観覧車ごときに抜かされてたのかぐあっ!」
問答無用で再度力強く名無しをオバケヤシキとやらまでひきずっていった。
途中「無理無理、ボス絶対無理」だの「ここのは特別やばい」だの何だの発していやがったが、どうせゴーストと名のついてもハロウィンの仮装程度だろ。
とか何とか思っていたが。
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