ここはヴァリアー! | ナノ






「…上んのかこれ」

「そりゃそうだよ、テレビでめっちゃ回転してたでしょ」



ああしてた。
バターになるくらいしてた。
だがジェットコースターとやらには恐らく難易度が存在して、俺が乗っているのは一番楽な奴なんだろう程度に思ってた。

そう言ったら隣で鼻で笑われた。
この拘束具がなかったら灰にしてやるところだ。
俺達を乗せた乗り物はかなりののろさで頂上まで辿り着くと。

急降下し始めた。



「うお…!」



待て、待て待て待て、んだこれ兵器か、何かの兵器か。
首が千切れるだろこの風圧。
いやそれより大事な俺の羽が千切れる。

てかさっきから名無しが大人しいがあいつ気絶でもしてやがんのか。



「おい、名無し…!」

「あー今ルッスにメールしてるから無理」

「てめぇにそんな神経があると思った俺が間違いだった」



そうだこいつはそういう野郎だ。
俺の心臓を跳ね上げさせるためならどんな演技でもする奴だった。

かなり長い時間上下左右に振り回された揚句、ようやくゴールに着いた時に名無しが係員へ「もう一周!」と叫んだ瞬間容赦なくぶっ叩いた。



「いやー面白かったなーボスの初体験」

「変な言い方すんじゃねえ…」



まだ周りが揺れてる気がするが根性で押しとどめる。
名無しの頭も殴りすぎて多少グラついちゃいるが知ったこっちゃねえ。



「…次は静かな乗り物に連れてけ」

「はいはいよー。あ、じゃああれ乗ろう、観覧車」



あれ、と指さしたのはやたらでかい丸型の乗り物。
一瞬動いていないように見えたが、ずいぶんとゆっくりだが回転している。

名無し曰く「遊園地の強敵ベスト3」の一柱らしいが、さっきのジェットコースターより威力はなさそうだ。






「よいしょっと。あははボスでかいから狭そう」

「……本当にせめえな」



名無しと乗りこんだ観覧車とやらの一室は両手も広げられねえ。
遊園地は俺が閉所恐怖症じゃなかったことを感謝しろ。



「あ、そういえばこれてっぺんまで昇るとかなりの高さになるけど、ボスそれは平気だよね?」

「……」

「ボス?」

「降りる」

「だああアウトか!ボスお願いだから自分のだめなもん把握しといて!」

「ハッ、自分の粗探しなんざ何の得にもならねえ」

「しておけば少なくとも今は得しただろうに!」



とにかくもう結構な高さになったから降りるなと引き留められる。


 



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