「ボス、園内の見取り図もらってきた。どこから攻める?」
攻めるってここは敵のアジトか何かか。
そう言うと中には失神しかけるアトラクションもあるからある意味戦いなんだと名無しに力説された。
こいつがまじめな顔になると信じそうになるが、こいつがまじめな話をすること自体がふざけているからそこまでは本気にしねえ。
「どこが強いんだ」
「やーやっぱジェットコースターは三本の指に入る強さだね」
「ならそこを倒すぞ」
「ラジャ!」
案内をこいつに任せてほとんど客のいない敷地内を闊歩した。
夜だといっても電飾のせいで暗い所などほとんどない。
…おい、さすがに俺はワイシャツだがこいつは上から下まで余すところなく隊服じゃねえか。
良いのか女がそれで。
などと勝手にこいつの女としての将来像を心配していたら数分でジェットコースターとやらに着いた。
我ながら無駄なことをした数分だ。
「……でけえな」
初めて実物のそれを見て、テレビは何でも縮小しやがることを思い出す。
んだこれは、でけえじゃねえか。
「そう?これはまだ小さい方だよ」
何だと。
袖をぐいぐい引かれてジェットコースターの一番前に乗り込む。
理由を尋ねると、「万一ボスの羽が取れたとき後ろの人がキャッチしてくれるように」らしい。
「俺の羽なめんじゃねえぞ、まあこいつの特殊能力を知らねえお前がそう思うのも無理はねえが」
「え、そんなに強度あるのそれ」
「当然だ。200馬力で引っ張ったって千切れねえ」
「そうだね、髪が先に千切れるね」
「なんー」
ガクン、と衝撃が走ると、すぐに俺と名無しを拘束した乗り物が動きだした。
動くなら一言くらい言え、舌噛みかけたじゃねえか。
電車にも似たような音と振動を乗せて、水平に乗り物は進む。
ってかトロいな、こんなんで絶叫するなんざどこのドカスだ。
「きゃあああ怖いよおお!」
ここのドカスか。「はっ、こんなんでビビるとはテメェもまだまだガキだな」
「いやあ怖くて怖くて仕方ないよおおお」
「これだからカー」
全てしゃべり終える前に、ガゴンッと突然乗っていた入れ物が斜め上へ向かって登り始めた。
おいちょっと待て。
prev next
戻る