これしかない。
もうこれしかない。
もう一度やるしかない。
もうこれしかない。

あいつに思い知らせるためには、もうこれしかない。



「…うん、ありがとぉ。じゃあねー♪」



ピッと切った伝令神機の向こうで今まで話していた男は、役に立つのだろうか。
でももうやるしか、ない。





「みんな…あんたが悪いのよ…」





電源の切れた伝令神機を握りしめて呟いたその声は、憎しみを極限まで込めたように。
そしてそれを自分に言い聞かせているかのようにも、聞こえた。















――零番隊隊室


「副隊長、書類が出来ました。」

「…よし。葵様に見てもらえ」

「はい。」

「空第三席、寝ちゃ駄目ですって」

「ふあぁ…」

「葵ー、判子もらいに来たわよ」

「こんにちは乱菊さん」



職務時間の真っ最中、静かな会話がやりとりされている零番隊の隊室。
本職が十三隊の管理と言うだけあって事務的な仕事が多いが、大虚の始末なども時々行っていた。






「最近そんなに大虚が出てるの?」

「なぜです?」



乱菊が持ってきた十番隊の書類に目を通しながら聞くと、くいっと親指で隊室の奥を指した。



「七八九席の姿、私ここが復活したときしか見たことないのよ。現世にでも潰しに行ってるのかと思って」

「いえ、その三人には別の仕事をしてもらっているんです。時々帰って来ますけど会える確率は低いでしょうね」



ところで市丸隊長は?と尋ねると。




「……机の横であんたの猫とにらみ合いしてるわよ」

「あら」




平和が続く零番隊。
扉を傷つけられる事件が起きてからは何事もなく、復活してから十日が過ぎた。
少しだけ隊員の緊張も緩んできたようにも葵は感じていた。

だがそんな時、廊下を走ってくる大きな音が聞こえた。
それに直ぐ様零番隊の隊員達が反応したのは、その数が一人や二人ではないため。



バアンッ!



「水無月葵はいるか!」



先陣を切って扉を蹴り開けたその死神は。





「…恋次!?」



六番隊の隊長・阿散井恋次。
その後ろにズラリと並ぶ十数人ほどの死神。
その全員が眼光鋭く葵を睨んでいた。



「何のご用でしょうか」

「ハッ、美花を斬りつけた犯人にしちゃ落ち着いてんな」



その一言に近くにいた殺那がキッと恋次を視線でいさめたが、それを振り払うように座っている葵の前へ近づいた。



「俺達が何のために来たか分かるか?」

「遊びにでは無いことは分かります」



上からギロリと睨み下ろしてくるにも関わらず、さして視線を交わそうともせずに受け流す。
その態度に腹が立ったのだろう。



「てめぇ…美花を斬りつけるなんざ十年早ぇんだよ!」



そう叫びながら自身の斬魄刀を抜き、葵めがけて斬りかかったが。



「っ!」




葵へ刀の先が触れるか触れないかのところで、殺那の刀と七猫の爪形の斬魄刀が交差し恋次の刀を押し止めていた。







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