「……さて」
宣言の終了後、すっかり人払いがされて誰もいなくなった裏庭でギンと乱菊と零番隊の隊員のみが残っていた。
解散してから今の今まで離れ離れだった隊員達。
再会を喜ぶ者、積もる話がある者と様々な様子だったが、どの顔もとても嬉しそうにしていた。
「わー猫ちゃんだ!久しぶりー!!」
「…もうちょっと静かになってると思った」
「空に限ってそれはないでしょうね」
瀞霊廷に残っていた空は七猫と久しぶりの対面。
もちろん殺那も。
「お前も変わらないな七猫」
「…誰だっけ?」
「いい度胸だ」
空に殺ちゃんだよ!、と教えられてようやく気がついた。
「だって分かんねーもん。俺の知ってる檻神は髪がウザいくらい長かった」
「お前の中で俺の印象は髪のみか」
「うん」
殺那の怒りの導火線に火がついた最中、葵の方では。
「お久しぶりです水無月隊長!」
「お会いしたかったです水無月隊長!」
「静かなムードだったからずっと我慢してたんですよー!」
「葵隊長ぉー!!」
「……乱菊、葵がフィーバーしとる」
「正確には隊員達がフィーバーしてるのよ。ほら助けに行かないとどんどん隊員の波にもまれていくわ」
再会できた感動で群がる隊員達に無抵抗で埋もれていく葵を駆け寄った乱菊達が救出した。
「葵、大丈夫?あんた身長高いわけじゃないから、外から見ると完全に見えないわよ」
「ああ、乱菊さん…」
『乱菊』という単語が口から出た途端、今まで葵にまとわりついていた隊員達が素早く反応した。
「…もしや、松本様と市丸様ですか?」
「ん?そうやけど」
「松本様と市丸様だー!」
「水無月隊長と出会ってくださりありがとうございます!」
「まさか二人と会えるなんて!」
「胴上げ!胴上げ!」
「はいい!?どっ胴上げは無理無理!」
「あかん僕もう持ち上げられとる!」
今度はわらわらとギンと乱菊に向かっていく隊員達を見て、葵は。
「…零番隊には空並に元気な隊員が数名いること、教えてませんでしたねえ…」
何事も無さげにそう呟いた。
――――――…
「えーそれじゃあ零番隊の復活を祝してー…かんぱーい!!」
「かんぱーい!」
「いえーい!!」
夜、零番隊の執務室にて酒盛り開催中。
もちろん発案社は音頭をとった乱菊。
零番隊の仕事場の隣にある執務室は物がなく、畳まっさらな状態のため宴会で集まるにはやりやすい場所だった。
参加者はギン、葵、乱菊の他、十一番隊の面々に空に殺那。
加えて。
「乱ちゃーん!こっちにもお酒ちょうだーい!」
なぜかいる京楽 春水。
「八番隊長さんまでおるとは思わんかったわ」
「私も美花信者だと思ってたわ」
「んふふふ、実はこっそり七緒ちゃんに葵ちゃんのこと調べてもらってたんだよね〜。七緒ちゃんが言うには『水無月さんに警戒は必要ない』らしいし」
見る目はある方なんだよ、とポンポン葵の頭を撫でながら酒を飲んだ。
その手をギンが容赦なく払った。
「それにほら、こんな綺麗な子が女の子を斬りつけるわけないじゃない」
「うちの隊が全員そんな考えだったら良いんだけどね……それなら飲むわよー!!」
「おー!」
「飲め飲めー!」
一時間経過。
「……あのノリにはついていけへん」
「俺達きっと少数派なんでしょうね」
部屋の中心で飲みまくる乱菊と京楽+十一番隊。
そんな騒ぎに馴染めないのか酒が飲めないのか、隅の方でそれらを眺めている殺那とギン。
葵はやちると一緒に、さっきから花札やら何やらの遊びに付き合わされている。
「七猫言うんは来とらんの」
「あいつはこう言う騒ぎが嫌いですから。何か用でも?」
「いや、目上への礼儀っちゅうもんを教えたろうとしたんやけどね……」
恐らくそれがかなり幼稚な悪口の言い合いになるだろう事は殺那にも予想がついた。
あの葵にですら敬語を使わない七猫に礼儀を教えるのはまず無理な話だろうとも。
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