所変わって元柳斎と葵のいる部屋の隣。
いつか零番隊の講座を開いた時のように、車座になって座る。
殺那が懐から一枚の折り畳んだ紙をギンと乱菊の前に置いた。

きちんと折り畳まれたそれは皺も染みも見受けられない。
紙の始めに『掟』とだけ銘打ってあり、三文ほどの短い文章が書かれていた。





「これが零番隊の隊員へ解散時に配られる『掟』です。破棄及び紛失することは許されません」

「えらい物々しい文章やねえ…」

「ほんと、漢字がやたらあるわ。えっと…」





【一、解散後瀞霊廷内に残るものは霊圧制御装置を複数装着し、潜入する隊の誰にもその正体を知られてはいけない。

ニ、一部の死神を除き、零番隊に入隊以前に知り合った者と関わりを持ってはならない。

三、零番隊のこの解散及び再びの復活は全て現在の零番隊隊長である者に権限がある。】






「何と言うことはないでしょう。」

「まあそうよね…ニの、零番隊入隊以前に知り合った者と関わりを持ってはならないってのは?」

「ああ、それでしたら少し順を追って説明します。今は零番隊の存在を知るものが誰一人としていないことになっていますが、よく考えるとそれはおかしいでしょう」

「そりゃな。元はちゃんとした隊やったんやし」

「はい。なので四十六室が零番隊の存在を知っていた者全ての記憶を消すように動いたのです。ですがかなり不安定なので、ちょっとした関わりで記憶が戻ることがあります」


「ああ、それで。」

「乱菊様と市丸様は幼少時から葵様を知っていますし、全ての記憶を消すと人格形成に影響がありますので四十六室の記憶操作からは外されました」

「あ、この『一部の死神を除き』って私達の事なのね」

「知らん間に凄いこと起きとったんやね…」



説明を終えた殺那が再び『掟』を折り畳み懐にしまった。



「お二人以外で入隊以前の知り合いと会話すらするなとまではいきませんが、親密にしていると四十六室でまた記憶処理が行われますので」

「怖ッ!」



零番隊にまつわる闇少し触れ、事の重大さを理解した時、おもむろにギンが手を挙げた。
教師に質問する生徒のようだ。



「なあ、一つ聞いてもええ?」

「なんでしょう」

「七猫って誰や」



相当険しいオーラを放ってそれ一言のみを聞いたギン。



「…葵様はお二人に七猫の話はなさいましたか?」

「僕だけ葵の謹慎中に聞いたわ」



謹慎中のため行く場所がない葵を三番隊の隊室に連れて行った時、乱菊の危機に葵が飛び出していく前のこと。
九番隊の四人を襲ったのがギンではないと確信が持てたので、葵はその正体を伝えていた。



「私聞いてないわよ?」

「しゃあないやん、お前その時良々ちゃんに襲われとったんやし。その直後に葵が飛び出してったから、僕も途中までしか知らんよ」



かつて勘違いとは言え七猫に無実の罪を着せられていたギン。
一本調子な口調からもやはり怒りが感じとれる。

殺那は葵から七猫が九番隊の隊員をズタズタにした全貌を以前に教えられていたため、ギンの唐突な質問にもついていけた。





「七猫…ですか」

「せや。僕と似てるから間違えたんやろ、犯人」

「え!?こんな狐顔なの!?」

「いいえ、七猫は確かに銀髪ですが……目は見たことがありません」

「見たことない?」

「はい、あいつは妙に前髪が長くて誰にも目を見せないんですよ。葵様なら見たことがあるかもしれませんが」



とりあえずギンと乱菊の頭の中に七猫像が浮かんできた。
ギンもそれで少し落ち着き、その場に座り直す。



「似ているのはそれくらいではないでしょうか。とにかく本当に生意気で、葵様以外の言うことは何一つ聞かない奴です」

「ギンと仲良くなれそうにないわね」

「ああ…多分七猫は市丸様が嫌いです」



衝撃発言。



 



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