「…ちょ、待ち」

「はい」

「嫌いとか云々の前に…まだ会ってへんよな?」

「会話もしていないかと」



嫌われる要素がないのに嫌われていることに気がついた。
別に七猫とやらが自分をどう思おうが関係ないが、会いもしていない存在に嫌悪感を抱かれるのは少々癇に障る。



「いいじゃないあんた嫌われ慣れてるんだし」

「いやいや、なして見てもおらん奴に嫌われるん、僕。副隊長さんが知っとるほどに」

「理由は色々あるのですが……まあ、風音元七席が葵様を嫌う理由と似てますかね…」

「……ああ、ちょっと分かったわ」

「え、僕ちょっとも分からんけど。なして乱菊には分かるん。教えてや」

「それは七猫本人から聞いてください。あいつが市丸様と話をすれば、ですが」



あららぁ、と呑気にリアクションしている乱菊を聞き流して、僕かて嫌いや!と何とも大人気のないことを呟いていた。
そんな時、静かに三人の後ろで襖が開いた。

自然とそちらに全員の視線が行く。
総隊長室から出てきたのは、葵。
話の論点にいた七猫の飼い主。
だがそんな会話をしていたことを知ってか知らずか、その目はいつのまにか鈍い光を発していた。

一瞬不意にかいま見えた彼女本来の美しさに、体の中が静まる。





「殺那」



透き通りよく響く声は自分の部下の名を呼んだ。
はい、と殺那もそれに見合う態度で葵の方を向く。
その姿をいま一度確認してから、言った。





「少し、お話があります」





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私達じゃなくて?
ちゃうやろねえ



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