「久しくぶりの解放で力が目覚めきっておらぬはと言え、四十六室も限界じゃ。早くこれを付けよ」



そう言い袖から出したものを葵に手渡した。
それは今まで葵が身に付けていたものとそっくりな、鍵の形の霊圧制御装置。



「スペアあったんかい」

「儂が予備を用意しておらぬとでも思うたか。後で砕けた方の物も持ってこい、直さねばならん」

(あ、蒼鼎が新しい方へ移動してる…)



そう思いながらもまた首から鍵型のソレをかけ、元柳斎が術式を結んだ直後。
フッと空気が軽くなった。



「…何?今の。なんか肩とか軽くならなかった?」

「葵様の霊圧が四十六室の抑制から溢れてきていたのです。」

「うむ、四十六室でもギリギリと言う所じゃ。さて葵、お主は霊圧を解放した状態をほとんどの隊長に見られたのう」



う、と痛いところを突かれたような声が葵から出た。



「そしてそこにおる殺那の特異性も露見しそうでの。折角普通の隊員として潜り込んでおったものを」

「葵様に責任はありません。不用意に飛び出してきた俺の行動が浅はかだっただけです」

「だがそうさせたのは葵じゃ」



殺那も葵同様の声は出さずとも、似たような反応を示した。



「儂らはなんとか今まで色々な事態も表に出さずにおった。ただでさえ葵、主の存在は特殊で脅威じゃからの。しかし、最早それが隠しきれなくなった」



よって、と咳払いをしてから。





「四十六室の中で、零番隊を復活させようと言う声が出ておる」





それに大きな反応を示したのは当然葵以外の三人。
過去に存在した、今は誰一人として知る者はいないと言われる幻の隊。
それが復活と聞けば、大人しくしていられる者は少ない。



「…え、本当なの?確か零番隊って、葵が隊長でしょ?」

「……また偉いデカい話になってきたな」



話の中心にいてもおかしくない葵は、いつものように一片の表情を変えることもせずただそこに座っていた。



「…総隊長殿。それはまだ決定はしていない、という事ですよね」



殺那が重々しく開いた口に、元柳斎はうなずいて答えた。



「もちろん四十六室にその権限はない。解散も復活もそれを決められるのは、現零番隊隊長のみじゃ」



そう。
だからまだ復活が決まったわけではない。
葵の意思一つでそれは決まるけれど、復活させない選択肢を選ぶことも出来るのだ。



「……総隊長のご意見は」

「老いぼれに聞くでない。しかし、主が窮地に陥った際、現世の任務から檻神を引き戻したのは儂じゃ。それが最早どういう意味か、気づいておるだろう」

「…………」

「良く考え、己で決めよ。掟は何があっても消えぬからのう」

「掟?」

「松本と市丸は知らないであろう。それなら教えてやるとよい殺那、これから儂は四十六室の意見を葵に伝えねばならぬ」



お主らに聞かせることは出来んからの、と退室を促した。
殺那はすぐにそれを了承しギンと乱菊ともども隣の部屋へ消えていった。
その素早い行動を見て。



「ふむ、副隊長の躾は成功したようだのう」

「殺那まで私の子ども扱いですか」

「お主の部下は皆主の子のようなもなじゃ。そのしっかりすぎる性格が問題かもしれぬ」



愉快そうに笑いながら元柳斎は杖に両手を乗せた。



「なに、これでも心配はしておったものでの。あの副隊長は人の命令など少しも聞かない気性じゃった」


「…それはもう、昔の殺那ですよ」




 




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