「……九番隊戻ったんか副隊長さん」

「殺那は家に戻って後を継ぐものとばかり思っていたので、私も驚きました」

「これ以上ない仕返しねえ」



以前誤解で葵へ敵対心を特に剥き出しにしていた二人に我慢ならなかったのか、最後の最後できっちりやり返した殺那。
これから身近な殺那に会うたび自分たちの負い目を思い出させられる二人を思って、さすがに少し同情した。



「あの超元気娘は十一番隊にでも入った?」

「いえ、空は殺那と同じく元いたところに戻りました」

「元いた言うても、確か四番隊の入院棟やろ」

「はい、その四番隊に入りました」

「ええええ!?」









――四番隊入院棟


「おーいそろそろ空さん来るから転びそうなものしまえー」

「水入れも避けとくべきかしら」

「そうだな、前転んだとき奇跡的な確率で突っ込んでたし」

「皆さん検温の時間ですよー!」

「お、来た来た」







隊長机で書類をまとめていた卯ノ花に、山田がまた新しい報告書を持ってきた。
いくつかの話題と一緒に。



「隊長、最近七番入院棟の雰囲気が良いですね」

「ああ、空さんが担当の所ですね。あの通りいつも元気ですから、患者さん方にも喜んでいただけて」

「自分からコミュニケーションを取ってくれますしね。……でも、昔僕達と同じ四番隊だった時とは別人みたいですね」

「人生には浮き沈みというものがあるんですよ」



そこまで話したとき、元気良く隊室に戻ってくる声がした。



「検温終わりましたー!」

「あ、お帰り空ちゃん」

「お帰りー」



部屋に入るたびにかかる声に、どこか嬉しそうに笑った。
そのままの笑顔で検温表を卯ノ花へ渡しに来る。
表は馴染みになった患者にも確認してもらっているので、きっともう間違いはしていない。



「確かに受け取りました。空さん、零番隊からこちらに来てもう不安はありませんか?」

「不安は…もういつも不安ですー。何かミスしたり怒られたりしないかすごく怖いです。でも卯ノ花隊長!空大好きな人がいるんです!」

「大好きな人?」

「はい。その人がですね、『空は良い子だから、どこに行ってもきっと上手くやれる』って言ってくれたんです。その人が言ってくれたなら絶対そうなるんです。だから空頑張ります!」


「…そうですか」



その人が誰だか少し分かった気がします、と卯ノ花もとても優しく空へ笑いかけた。

その笑顔は、誰かに似ていた。


 



back


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -