夢を見た。



「零番隊を解散したいと思います」



自分がそう告げた時の夢だ。

数十年前、葵は元柳斎にそう請願した。
無表情のまま唐突にそんなことを切り出したが、元柳斎の方も大きな驚きは見せなかった。





「…ふむ。そろそろ潮時かもしれんのう…」

「……総隊長のお耳にも、届いていますか」

「儂も独自の情報部隊は持っておるからの」




零番隊の本来の役割は死神の怠慢を無くし向上心を引き上げること。
つまり瀞霊廷から腐敗が消えれば、そのままあり続ける意味はない。

瀞霊廷にとっては、零番隊が存在しないことこそが平和な姿だから。



「喜ぶべきことなのか分からぬのう。
おかげで十三隊の乱れはなくなったが、お主らは…」



そこまで言って言葉を区切った。
その先が何を意味するのかはおそらく誰よりも知っている。
そんな元柳斎を見て、葵は小さく首を横に振った。



「仕方ありません。命まで狙われてしまっては…大きな衝突は避けられませんから 」





殺那が表情を無くして隊へ戻って来た日があった。
就業後に葵にだけ話した事は、とある隊員達の大きな集会での話を聞いてしまったのだという。





【某日明け方に零番隊の末席隊員を襲撃する】






零番隊での大きな権限を求めてこの隊へ入隊したがっている者が尽きないのは知っていた。
それらを断る理由に、「隊員の空きが無い」と告げていたのだ。
ならば空きを作ってしまおう、という集まりだった。

憂うべきは襲撃される事ではない、それを知った零番隊の隊員が応戦すれば
、護廷十三隊と零番隊が対立してしまう。




「……儂もお主と同意見じゃよ。急であろうと無かろうと、いずれ解散の日は来たのだからな」

「……ありがとうございます。解散後は、どうか残りの隊員をよろしくお願いします」

「うむ、何も案ずるな」



やるべきことはやった。
悔いがあるとするならば、きちんとした説明をする時間が無いままに解散を選択しなければならなかったことだ。


向こうで日付が決まっている以上ことは急がねばならない。
零番隊の隊員に経緯を説明すればする程、正義感の強い彼らは立ち向かおうとするだろう。
しかし一人でも理解者を得るよりも、すぐに解散をして一人でも犠牲者を出したくなかった。









そうして空を元柳斎にたくし、殺那と別れ、七猫の元へ行った。






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