「本当は続くまでいじめと呼ばれるものを受けているつもりだったんです。いつかあなたが飽きる日が来れば、それで元に戻ると思っていました。だから私は、零番隊も復活させる気はありませんでした」
でも、と繋げる。
「良々さんと乱菊さんを巻き込んだのはどうしても、許せませんでした」
私が風音を誘い込み、風音が松本を襲ったとき、もうこれは葵だけの問題ではなくなってしまった。
だから少しでも早く終わらせるために、零番隊を復活させたのだろう。
「ごめん、なさい……っ」
口から出るのはそれだけだった。
それ以外の言葉は言えなかった。
流れる涙を拭うのも唯一のこの言葉を止めるのも許されないと思った。
ただ、ただ自分が、憎らしかった。
取り返しのつかないことをしてしまった後悔とひたすらな自分への嫌悪が、誰に言っても今更になってしまう今、襲ってきた。
そんな私の頭にふ、と葵は手を添えて。
「もう大丈夫ですよ」
あの時と同じように、優しく言った。
苦しかったですね、なんて言って、どこまでこの存在は優しいのだろう。
人にこれだけ優しく出来るのに、どうして自分の事は、二の次にするの。
「謝っていただければもう、それで良いんです」
その言葉に涙で濡れた顔をあげると、記憶の中と寸分違わぬ微笑みを浮かべた葵がいた。
幼い頃に憧れた、透き通るような肌。
不思議な色の髪。
この世界の雪と結晶を寄せ集めて作られたような、そんな強く儚い女の子。
どうして、どうしてそんなに優しく笑うんだ。
どうしてどこまでも私を救おうとするんだ。
涙が止まってくれないじゃない。
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王様になりたかった
もう一人は嫌だったから
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