05


ヒビキとソウルが喧嘩したらしい。

らしい、と曖昧な表現を使っているのも本人が認めていないからである。


「聞いてますか!レッドさん!」

「うん、聞いてる聞いてる」


実にめんどくさい。
そんなこと本人たちで勝手にやってくれと言いたいところだが、今のヒビキの剣幕に何を言っても無駄だと悟った。

というか、何故僕に言うんだ。
普通、相談だったら僕じゃなくグリーンにのほうが妥当だろう。
あぁ、いや、これは相談ではないのか。ただの八つ当たりだ。確かにそれなら何も言わない僕のほうが適任だな。


「だってあいつ僕が話しかけてるのにぼーっとしちゃって!そんなことされたら普段能天気とか言われる僕だって心配になるわけですよ!」

「うんうん」

「だからあいつのことなら話弾むかなと思ってたのに変な顔して無視するし!」

「うんうん」

「これで心配するなってほうが無理なのにあいつときたら!」

「うんうん」

「腕払い除けることないじゃないか!」

「うんうん」


もう本当にめんどくさい。
僕は適当に相槌を打っているだけなのに、それに気付いていないのか目の前にいる生徒会第一書記はいまだに喚き続けている。生徒会長なめてんのか。



「もう!そんなんだからソウルのことは気にしない!話なんて聞いてやんないんだから!」

「……うんうん」


あぁ、駄目だ今の。
こいつらって本当に、あの時の僕たちに似てる。


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