04


あいつに出会ってから全てがうまくいきすぎていた。そんなときふと心配になるのだ。もし、あいつが、ヒビキが俺の前から去ってしまったらと。


「最近ソウル元気ないよね。なんかあったの?」


いつものように中庭でヒビキと昼食をとっていると、前置きなくそう聞かれた。


「別に何もないが。」


無意識のうちにふいっと顔を背けて返事をしてしまった。
自らのとった行動に気付き、嫌な思いをさせてしまったかとヒビキを見ると酷く真剣な顔をして俺を見ていた。


「ひ、びき?」


「…ソウルは嘘つくの下手だよね。」


そう言うと今まで食べていた弁当を下に置き、空いた手を俺の頬へと添えてきた。


「なっ、に、するんだ…」


「ソウルが悪いんでしょ。何か無理したような顔して会話しようとするから。」


「別に無理なんて…」

「してるでしょ」

「……、」

一体どうしたと言うのだろう。
普段見せない表情で、いつも高めの声のトーンを少し下げて、いつも童顔だと嘆いていたあいつの面影はどこにいったのだとといただしてやりたいほどに真剣に見つめられる。


「ねぇ、何を悩んでるの?僕にも言えないようなことなの?」


そう言ったヒビキの顔はどこか寂しげでつい、違う!と声を張り上げてしまった。

今は昼休みで、いくら中庭といっても回りに人がちらほらといる。そんな所で声を張り上げ、この格好だと好奇の視線を向けられるのは必然的なことなのだろう。


そのことに気付いた俺は顔に熱が集まるのがわかり未だ頬にある手を振り払った。

まさか振り払われるとは思ってなかっただろうヒビキは目を見開いて俺を凝視したかと思うと、酷く分かりやすく不機嫌な表情をして立ち上がった。


「そんなに言いたくないならもう聞かないよ。それじゃ。」

「…え、」

俺の思考がまとまらないうちにヒビキは弁当を適当に片付けてからどこかへ歩いて行く。あの方向なら普通に考えて教室だろう。なんて、冷静に判断していても追いかけるという行動はできない。


「…!、まっ」


やっと言葉になったと思ったらこんなもので、しかもヒビキの姿は見えない。
見えないのに、ただ呆然とあいつが歩いて行った方向を見ていた。


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bkm
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