ソウルを初めてみたのは中学に入学してすぐのことだった。
教室には制服にはしゃいだり、友達を作ろうと必死な奴等ばかりで呆れ返っていたが、僕自身人付き合いは得意な方だからすぐ友達が出来た。だがそんなとき、見つけたのだ。
一人無表情で椅子に座り、単行本を読んでいた“あいつ”を。
僕は新たに出来た友達など無視して、自然とあいつのもとへと歩を歩めていた。
綺麗な赤髪は、どれだけ地味に過ごそうとしても存在感を隠すことはできず目を引く。
声を掛けようか掛けまいかその場になって迷っているとあいつと目があった。
「あっ…と、初めまして、僕ヒビキっていうんだ。君は?」
突然話しかけられたことに疑いをもったようで、眉間に皺を寄せて暫く見られていた。
「……ソウルだ。」
彼はそれだけ言うとまた無表情になり視線を本に戻した。
「そっか。これからよろしくね、ソウル君。」
こちらを見ていないとわかっていても、つい出してしまった右手は戻そうにも戻せない。
しかし彼はその存在に気付いたようで本をぱたんっと閉じ、体をこちらに向け同様に手を差し出してきた。
僕はその事実が嬉しくて、すぐさま手を握った。
―――これが僕とソウルの出会いだ。
「それ、いい、…」
「でしょ?」
今まで僕の話を聞いていた幼馴染みのコトネは真顔でペンを走らせメモをとっている。
そもそも何故こんな話をするに至ったかと言うと、HRが長引いたソウルを待っている間、たまたま日直だったコトネから「二人が出会ったのって、いつ?」と何の気なしに聞かれたからだ。
「私、二人はもっと険悪な感じで出会ってると思ってたわ。」
「流石に初対面でそれはないでしょ」
「私がソウル君と初めてあったとき何て言われたか覚えてないの?」
「あー…そういえば…」
ソウルと出会い、結構話すようになってから僕はコトネに彼を紹介した。
―――何だ?この頭の悪そうな女は。
当時は恐ろしさしか感じなかったが、今にして思えば本人を目の前にしてよく言えるものだと感心する。
結局その後コトネにテストでもスポーツでも劣っていると知り泣くことになったのだが…。
「あれだけは忘れられない。ていうか、忘れない。」
「今更いいでしょ。許してやってよ。」
「…まったく。ヒビキ君はソウル君に甘いんだから。あとそのセリフ頂き。」
コトネはそう言うと書き終えた日誌を閉じ、席を立ち教室を後にした。
なんか今最後の方おかしかったな、気にしないけど。
コトネは所謂腐女子というやつで、同人活動というのをしているらしい。
モデルは僕たちや一つ上の先輩たちを使っているらしく、興味本意で見せてもらうとそれはもう…言い表せないような…
うん、とりあえず悲惨だった…
そんなことを思い出しているとガラガラ、と扉が開かれる音がしたため視線を向けると、あのときと変わらない綺麗な赤が見えた。
「すまない、遅くなった。」
「ううん、そんなに待ってないから。」
「そうか、」
「うん。それじゃ帰ろうか。」
「あぁ」
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bkm