お互いに

カタカタカタ…


単調なリズムを刻むパソコンの音だけが聞こえるこの部屋でグリーンはジムの仕事をしていた。


(最近、サボってたもんなー…)


カタカタカタ……パチッ


「よっし!ちょっと落ち着いたな!」


グリーンは伸びをしてから、立ち上がると台所へ空になった珈琲を入れに行った。


(そういえば、最近あいつに会ってないなー)


『あいつ』とはみちろんグリーンの幼なじみでありライバルであり恋人であるレッドのことだ。

レッドは今シロガネ山に籠っており、もう半年ほど会っていない。だがたまにグリーンが食料等を持って会いに行っている。


(そろそろ持っていくべきかな)


グリーンは入れ終えた珈琲を持って部屋へ戻った。


「やぁ」


しかしグリーンは部屋へ戻り驚いた。

さっきまで考えていたレッドが目の前にいたのだ。


「れ、レッド!!?」


グリーンは持っていた珈琲を溢さないようにテーブルの上に置くといきなり現れたレッドに顔を向けた。


「久しぶりだね、グリーン」

「おう久しぶり…なんでいんの?」

「最近会えなかったからね。たまには僕の方から会いに行こうかと。」

「ほー…」

「何その目?」

「いや、レッドがこんなこと言うのは珍しいし…なんか裏があるのかと…」


いつもシロガネ山まで食料等を持って行っても大して反応がないレッドが最近会えなかったからなんて理由でわざわざ会いに来るだろうか…それもジムに。

レッドは溜め息を一つつくと部屋の端にあるベッドへ腰を下ろした。


「僕だってそういう気分の時くらいあるよ」

「気分ねぇ…」


グリーンは珈琲を持ち直してさっきまで仕事をしていた机に置き、自身もその椅子に腰を下ろした。


「とりあえず、俺は仕事中だから静かにしてろよ。」

「うん」


(いったい何しに来たんだか…)


違和感を感じたが、グリーンは再びパソコンへ視線を移し仕事を再開した。


カタカタカタ…


「…あの、レッドさん」

「何?」

「何してるんですか?」

「グリーンの髪の毛で遊んでる」

「意味わかんねえし!!」

「なんだよ、静かにしてって言ったのはグリーンだろ?」


レッドは不貞腐れたようで、グリーンの髪の毛をぐしゃぐしゃとかき回した。


「ちょっ、まじでやめろよ!」


グリーンがそう言ってもレッドは手を止める様子はない。


(まさか、こいつの目的ってこれじゃないよな…)


「なぁレッド」

「何?」

「お前本当に、何しに来たんだ?」


グリーンがそう問うとレッドは今まで忙しく動いていた手を止めてグリーンを椅子ごと自分のほうに向けた。


「グリーンが悪いんだよ…」

「へ?」

「グリーンが僕に半年も会いに来ないから…」

「レッド…」


グリーンはレッドの背に手を回そうとした。


しかし――


「お陰で僕の食料が切れちゃったじゃないか!!」

「…はぁ?」

「僕にはカビゴンがいるんだから食料の減りが尋常じゃないんだよ!なのに君といったら、半年も会いに来ないで!したかなく僕の方から来たんだよ!」

「なんじゃそりゃああああ!!」


グリーンは勢いよく椅子から立ち上がり机を叩いた。


「なんだよ!!前半の流れだと『グリーンに会いたくて…』みたいなノリで話してたくせに後半それかよ!!」

「なんで僕がグリーンに会うためにシロガネ山を降りなきゃなんないんだよ!」

「なっ、お前なぁ〜…」

「なんだよ、なんか文句あるの?」

「…っ、バトルだレッド!!」

「いいけど、君の敗けは確定してるよ」

「ふっ、俺だって一応トキワジムリーダーなんだよ!最強ジムリーダーなんだよ!いつまでも敗けてばっかなわけないだろ!」

「じゃ、敗けた方が勝った方の言うことなんでも聞くこと。で、どう?」

「上等だ!俺の強さ見せてやるよ!」

「…男に二言はないよね?」

「ったりめぇだろうが!」

「後悔させてあげるよ、グリーン」

「はっ、やれるもんならやってみな!」




(はい、僕の勝ち)(ちくしょう!あとちょっとだったのに!)(ちゃんと約束守ってね?)(…あ)


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