「…っ、おい!レッド!」
「っ、何?」
口の力を抜きそっと肩から口を外すと透明の糸が1本引いている。
普段晒け出されることのない白い肌に歯型がくっきりとついており自然と口角が上がった。
「…おい、嬉しそうな顔すんな。こっちはかなり痛えんだからな!このっ!」
眉間にしわを寄せながら僕の頬を引っ張るグリーンにごめんごめんと謝るが上手く言葉にならなかった。
引っ張られ続けていた頬を解放しようと腕を払いのけるとグリーンの眉間のシワがさらに深くなったように見えた。
「お前ほんと噛むのやめてくんない?お前のせいで傷物になったらどうしてくれんだよ」
そのときは僕がもらってあげる、と言って顔を近づけるとばーか、という返事とともにグリーンのデコピンが返ってきた。すぐ手が出ることがグリーンの悪いとこだと思う。
「……ヒリヒリする」
「俺はその倍くらい痛いってーの」
ひひひと昔から変わらず意地悪に笑うグリーンが可愛くて口元が緩む。
あの頃と比べたら今は成長して声も、身長も、色んなとこが変わってしまった。性格だって角が取れ丸くなったが、この笑い方だけは変わらない。本人に言うことはないだろうが僕はたまに見せるグリーンの笑い方が好きだったりする。
「て、いうか」
ふと思い出したような仕草の後、なにやら真剣な顔をしてグリーンは僕と目を合わせ言った。
「いつまで裸でこうしてればいいのかなぁ、レッドくん」
「…あ」
無駄な話が入ったせいで忘れていたが現在僕たちはお互いに何も纏っておらず、まあ言わずもがな、そういうことをしようとしていたところだった。
「あー…、ほら、グリーンが止めるからさぁ…」
「はー?俺のせいにすんなよ。元はと言えばなぁ、お前が噛むからこんなことになってんだろ、ばーか」
僕の歯型がついた肩を撫でながら悪態をつくグリーンに小さくごめん、と謝ると分かればいいんだ、と言いまたさっきと同じようにひひひ、と声を出し笑った。
そのことに嬉しくなり、顔を近づけ、わざと音をたてるように唇を啄む。最初は僕に任せきりだったグリーンも次第に僕に合わせて唇を動かしていくようになった。
顔を離し、今度は手のひらに唇を落とすとグリーンは驚いた顔をしてにやりと笑った。
「お前でもそんなこと出来んだな」
「…?」
よく意味が分からなかったがグリーンが楽しそうなので追求はしなかった。
それから肩、胸、腰、とキスを続けていく。
僕が赤く跡をつけると小さく溢れる声に僕自身も反応していくのが分かった。
「ぁ、のさ、レッド、んっ」
「…どうかした?」
いつもならこんなところで止められることないため嫌に心臓が跳ねだした。
グリーンは寝ていた体を腕一本で起こし、空いた手で僕の頬をそっと撫でると、赤みを帯びた顔で覗くように目線を合わせてくる。
「もう噛むなよ」
「はっ、真剣な顔して何言い出すかと思えば」
「そのかわり…」
頬にあてられていた手をずらし、隙間から親指を口にねじ込まれた。
口腔内で指がいやらしい音をたてて動き、僕の呼吸が早くなっていった。
溜まっていった涎が口の端から溢れ下へ下へと落ちていく。
「 今日はいつもよりちょっとだけ、激しくしてもいーぜ?」
そう聞いた瞬間、顎に力が入り、グリーンの指を噛みそうになった。あぁ、危ない危ない。これでは即座に約束が破綻となるところだった。いや、これは約束というよりも駆け引きかな。
疼く歯を落ち着かせながら未だ口の中にあった指に舌を絡ませ、目を合わせ訴える。
その言葉忘れるなよ?
bkm