「デートしたい。」
「へー。」
渾身のデートの誘いはラッセルの生返事で終わった。急に顔が赤くなる。俺もしかしてすっげぇ恥ずかしいことしたんじゃないか。とランピーは素になって気づく。実際すっごい恥ずかしいことをしたことに本人は今更気づいた。チラッとラッセルを見ると器用にフックで雑誌のページをめくっている。さっきの問いなど全く気づいて無いようだった。気づいてないよな?だって生返事だったもんな。何て考えながらラッセルを見てるとその視線に気づいたのか、何?と聞かれるといんやー。何て頑張っていつもの調子で返す。
なぜこんな恥ずかしいことを呟いたのか。実は理由があった。
「ランピーさんには、好きな人はいるの?」
先日一緒にお茶をしていたフレイキーに、突然そう言われた。
「んー。」
何て言って内緒ー。と適当にごまかす。男心は複雑なんだよ、フレイキー。と内心思いながら、どうしたの突然。と聞くと少し下を向いて頬を赤くされた。
「あのねー。」
「うん。」
「私は、自分の性別がよくわかんなくて。」
「うん。」
フレイキーは今日はワンピースと言ってもでっかいTシャツを着ているのだけれど、この間会ったときはズボンにワイシャツだった。フレイキー自信、男か女かわかっていないのだからこのような話になる。そのことにランピーは特に気にしてなく、フレイキーにもいい話し相手になっている。
「それでどっちの性別を好きになったらいいか分からないんだ。」
「大丈夫だよ、フレイキー。性別何て気にせず、好きな人を好きになればいんだよ。」
「そっかぁ!」
そう言ってフレイキーはふふ、と笑うとしばらくして又不思議な顔をした。
「どうした?」
「いや……私はデートに行くとしたらどっちとしてふるまえばいいのかなーって……。」
「それは、女とのデートは男役。男とのデートは女役でいいんじゃない。」
「そっかー!」
そう言ってフレイキーは又笑顔になる。そうか、フレイキーはデートなんてものを考えるんだなー。ってその初々しさを微笑ましく思う。
「じゃあ、ランピーさんはどんなデートしてるの?」
「え?」
適当にごまかすしか答えが見つからなかった。だって、デートをしたことがなかったから。
てなわけで、(一応)付き合っている俺たちはよくよく考えればデートと言うものをしたことが無いことに気づく。つりやら、家に行くやらはしたことがあるものの皆がしたことがあるデートなどはしたことがない。そんなわけで、渾身のデートしたいと言ってみたものの生返事で終わるという悲惨なことをされたわけだ。行為しただけじゃ、食事を共にするだけじゃ埋まらないものにランピーは激しいもどかしさを感じていた。
「お!ランピー、お前が見たがってた映画今週公開だってー。」
「へー。」
そんな思いも知らず雑誌を見ているラッセルを見ながら自分だけかなー。なんて考えながら、飲み物を取りに行った。俺レモンジュース。何て聞こえてきて、んー。と返す。こういうのも嬉しんだけども、でも本当は形に残す思い出って言うものが欲しい。元の位置に座ってプルトップを開ける。ぐーと、缶の中身を呷る。甘い味が喉に広がり同時に特融の胸糞悪さが広がる。
「よくのめんね。」
「これが好きなんだよ。」
そう言うとふーん。と返される。水滴でうまいように開かないのか、ラッセルは何度も同じ行為を繰り返している。開けたげよか?何て言うと、ん。と素直に缶を突き出される。カシュッと開けて渡してあげると、サンキュー。と軽く言って同じように呷る。はたから見たらただの友達だよなぁ。何て思って、つい
「ねぇ、友達とキスってするの?」
と質問すると、あいさつ代わりにするところがあるみたいだなーって返された。無理やり下を向いてた顔を上にあげ口内をかき回すキスをするとペシンと叩かれた。
「何?そう言う気分じゃないぞ。」
「こういうキス……する?」
何て聞くと、さっきの続きか?何て聞くからうなずくと、はっ、と鼻で笑ってから
「しないだろ。そりゃー。」
と言われた。そうかー、何て内心どこか安心しながらソファにもたれた。どこか今の関係を不安に思う自分がいて、それをラッセルにいちいち確認してしまう。女々しいな。何て考えながら、ほかの奴には抱かない不安は収まりを知らず___。すっごく俺ってかっこ悪いなって思ってしまう。かっこ悪いのが嫌でどこかいつも意地を張ってしまう。それをきっとラッセルは気づいているのに意地に付き合ってくれる。本当は、ビターな恋より濃厚で甘ったるいミルクを堪能したいはずなのに。俺の思いはいつもビターで、あっさり歯切れよく終わってしまう。どんなに胸糞悪くても、甘ければそれでいい恋がしたい。何て、言えたらどんなに楽だろう。じつは二人ともそう言う気だったってことが合ったらどれだけ甘いだろう。甘いのは口の中だけ。広がるライム味がなんだか羨ましかった。
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