スッと煙を吸い込んで、身を蝕むように味わって煙を吐き出す。今のでどれくらい俺は死に近づいただろうか。

「上機嫌だな。」

隣でラムネを咥えているラッセルを見る。その顔は不機嫌そのもの。俺は無駄な事だなぁと思いながらまた煙を吸った。

「そんな風に見えるんだ。煙草っていいものだねぇ。」
「機嫌良くねえのか?」
「いいよ。」

ラッセルといるからね。と付け加えるとラッセルの口の中でラムネが砕けた。随分と可愛らしい照れ隠しだ。

「……嘘くせぇ」
「本当さ。そんなラッセルは機嫌悪い?」

箱からもう1本、ラムネを取り出しながらラッセルは、良くねぇわと言った。

「禁煙のせい?」
「そんなとこ。」

少し酸味のあるラムネを咥えるとまたラッセルは眉間に皺を寄せた。

「我慢する必要あるの?」
「さぁな。」

なら、何でするのか。ラッセルが咥えているラムネを指で取った。
そしてそのまま口に入れて噛み砕いた。

「……きったねぇな。」
「何が。」
「いるなら言えばいいだろ。やるから。ラムネぐらい。」

そう言ってまた箱に手を伸ばす。その手に自らの手を重ねた。

「……何のつもりだよ。」
「なんで、禁煙するの?」

手を払い除けてラッセルはラムネを咥えると、頭をかいてまたラムネを噛み砕いた。

「きたねぇのは嫌いなんだよ。」
「肺の話?」
「そんなとこ。」

そこでこの話は終わった。

無事ラッセルは禁煙した。それと同時に俺も煙草をやめた。彼の香りでない有害なそれを吸い続ける理由が見当たらなかったからだ。

2016/05/18



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