バレンタイン(R-18)


※あんまりチョコプレイしてなかった
※最初のぞつばっぽい
※やりたいことだけ詰めた

*********

 あげる、と言って希望から手渡されたのはハート形のチョコレートだった。
 市販のそれと比べると、形がやや歪でラッピングも簡易。手作りであることは疑いようもない。

「お前が作ったのか?」

 椿は少々驚きを隠せなかった。
 希望は手先こそ器用であるものの、炊事に関しては当人も嘆く程壊滅的な腕を持つ。椿が口にしたことはないが、曰く「自分の料理で血反吐を吐いた」そうなので、相当な腕前と見て相違ないだろう。
 椿の心情を察し、彼は手を振って否定した。

「まさか。雫から形が悪いのを大特価で買ったんだ。甘さ控えめらしいから、これなら椿も食べられるかなって」
「…そうか。ありがとう」

 礼を述べると、彼の顔が見る見る紅潮した。照れて俯く仕草が可笑しくて可愛らしい。
 了承を得てから包装を解き、一口大のそれの一つを口に放り込んだ。

「!?」

 途端、奇妙な食感に思わず椿は口許を押さえた。
 砂利を口に含んだような不快な感触。明らかにチョコではない、食べ物ですらない何らかの異物が混入している。
 反射的に吐き出そうとティッシュに手を伸ばした直後、希望が機敏な動作で椿の鼻と口を塞いだ。

「飲み込んで」

 数分前の照れ笑いの名残など微塵もない、冷酷な視線と声音で希望は命じた。
 手を引き剥がそうと両腕を掴んだが、希望も必死だった。限界を迎えたのは椿の肺が先で、とうとう観念してチョコを嚥下した。
 喉仏の動きで飲み下したことを確認すると、希望はあっさり手を離して満足げに頷いた。

「食べてくれて良かった」
「……何を食わせた?」

 チョコの代わりに、込み上げる怒りを堪え切れていないドスの効いた声が、椿から吐かれた。
 希望は怯んだ様子もなく、ズボンのポケットから一枚の紙切れを取り出した。

「『芳醇なカカオの香り、ほろ苦いビターテイスト、ざらつく石の舌触り…異物混じりのスイーツであの人の心を鷲掴み!』」
「は…?」
「このチョコの説明文。簡単に言うと惚れ薬。アダルティに言うと媚薬」
「は!?」
「君とセックスするには、強引でもこうするしかないと思ってね。どう? ムラムラする?」

 期待を隠さずに訊ねる希望に、椿は怒りも忘れ混乱した。
 媚薬? あのじゃりじゃりした物がそうだったのか? 即効性があるようなものなのか? そもそも何故そんな物を用意してたんだ?
 またそう言われると、唐突に性欲が湧き上がってくるような────────。

「……まだ効き目薄いかな? もう一個食べてみよう」
「ん、むぐっ!?」

 希望はチョコを一つ口に入れると、そのまま椿に口移しで食べさせた。
 咥内の熱と互いの唾液で溶けたチョコが、形を崩し、砂利のような異物が舌の上で広がった。
 希望の舌が、椿の喉の奥へそれらを押し込む。抵抗しようと自分のそれが絡む度に、ぞわりぞわりと背筋が震えた。
 硬口蓋の襞を舌先でなぞられ、下半身に血流が集中するのを否応なしに椿は自覚した。
 希望はそれを察知し、唇を離した。

「硬くなってきたね」
「っ!」

 少し張り出した椿自身を、希望はズボン越しに指先で撫でた。緩やかな刺激にそれは益々勃起し、デニムの布地の下で窮屈そうに圧迫されていた。

「好きだよ、椿」
「な、にを…っ」

 椿が止める間もなく彼はズボンのジッパーを下ろし、下着をずり下ろして性器を露出させた。屹立したそれは空気に晒され震えているようだった。

「はあっ」

 椿は息を呑んだ。希望が先端を舐め上げたのだ。
 中断させるべく頭を押し返すも、全体を丹念に舐められ、怒濤の快感に思うように力が入らず、意味を為さなかった。
 逆に嗜虐心をくすぐられたのか、希望は意地悪く薄ら笑いを浮かべ、再びチョコを摘まんだ。
 噛み砕き、咥内で溶けたチョコを椿の性器の上に垂らした。

「な、何をして、いる」

 彼の舌からチョコが滴り落ち、根本に流れていく微かな感覚さえ快楽と化し、椿の理性を蒸発させていった。

「チョコプレイしようって言ったろ? もっと気持ち良くしてあげるからね」
「っく、ぁ」

 言うが早いか希望は椿のチョコまみれになったそれを咥え、手で睾丸を弄り出した。
 チョコの付いた部分に吸い付かれ、しゃぶり尽くされ、カウパー腺液が止めどなく溢れた。睾丸が精子を溜め込み脈動した。

「も…や、め…!」
「ん〜、でもこの状態でやめる方がキツくない? 一回射精してスッキリしようよ」
「あ、あっ…!」

 舌先がぐりぐりと先端を強く刺激する。片手で竿を扱き、もう片方の手が睾丸を優しく揉みしだく。最早耐えるのは限界だった。

「あ゛っ…! 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!」

 理性を手放し、椿は仰け反って達した。大量の精液が希望の咥内に放たれ、口の端から白濁の液体が漏れた。

「ん…」

 希望の口がゆっくり引き抜かれる感触が、射精直後の敏感な性器をまた半分ほど屹立させた。
 これも媚薬の効果なのか、果てたにも関わらず性欲は治まるどころか膨れ上がる一方だった。

「希望…」

 名を呼ぶ低い声に希望が顔を上げた。
 椿の赤茶色の瞳が、紅く爛々と耀いていた。理性も、良識も、倫理も、全てを放り投げたケダモノの目だった。
 蛇に睨まれた蛙とはこの事を言うのか、希望の体は畏縮し動けなくなった。
 椿は呆けた表情の彼を力任せに押し倒し、無理矢理唇を奪った。

「んんっ!」

 舌を捩じ込むと、希望の腰が跳ねた。左手で彼の頭部を押さえ咥内を蹂躙している間に、右手で彼の上着を捲り上げ、ベルトの金具を外し、下着ごとズボンを下ろした。
 ほぼ全裸に近い格好になった希望は、恥じらって脚を閉じようとしたが、椿に乱暴に開かれたことで阻止された。
 こいつの理性はまだ残っている。取り払うのに最も最適な物を、椿は視界に捉えた。

「お前も食え」
「もがっ!?」

 暖房の効いた部屋で既に溶けかけたチョコを、雑に口の隙間に押し込んだ。戻さないよう口を塞ぎ、彼が咀嚼し嚥下するまで、椿は自身の性器と彼のそれを密着させ擦り付けた。

「んっんん、ん!」
「さっさと飲み込め」
「〜〜〜〜っ!」

 希望は椿の腕にしがみつき、快楽に悶えながらもようやく食道にチョコを流した。
 喉仏の動きを確認して椿が手を離した。

「いい子だ」
「ぁ、いっ…! …い…れ…っ…くぅ、ぅ……!」

 喘いで上手く言葉を発せず、物欲しげな視線を送る恋人に、自然と口の端が吊り上がった。
 椿は一旦攻撃を中断し、指を二本軽くしゃぶってから、ひくついたそこにゆっくり挿入した。

「はぁっ、ぁ…あ!」
「…何だ、既に慣らしていたのか?」

 ある程度慣らそうと思っていたが、やけにスムーズに指を出し入れできる。
 媚薬まで用意していた辺り、余程椿とのセックスを心待にしていたらしい。

「んっ、だって……最近、椿、忙しくて、ご無沙汰、でっ……! ぁ、早く、抱かれたくてぇ…!」

 大分理性が飛んだのか、蕩けた紅顔の希望が答えた。
 ブルーグリーンの瞳が、貪欲に、一途に、椿のみを求めていた。
 視線が交わった瞬間、椿は脳が揺れたような衝撃を覚えた。胸の内から、じわりじわりと狂気が侵食した。

「そこまで言うのならば、俺も遠慮はしないさ」

 指を引き抜き、自身も上着を脱ぎ捨て上半身を晒した。
 今度は触れるだけのキスを交わすと、希望も椿の背に腕を回して受け入れた。

「お前は気付いていないようだから、この際言っておくがな」

 膨張した性器を彼の肛門に宛がい、椿は囁いた。

「実は、今まで全部挿れてなかった」
「…………え?」
「キツくて挿れられなかったんだ……だが、もう配慮する必要はないだろう? お前が、それほどまでに俺を求めているなら」
「えっ、え?」
「力を抜け」
「ちょ、ま、あ゛っ!?」

 一気に体を貫かれ、希望は悲鳴にも似た嬌声と共に仰け反った。椿は休む間を与えず、激しく腰を振り始めた。

「っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 声にならない声を上げ、生理的な涙を流しながらかぶりを振る希望の姿態に、彼の中で自身が更に大きくなった。

「っは、随分と乱れるじゃないか…!」
「あ、ああ、あっ…! あ、こ、こんな、ふかく、つ、つかれたこと、ないぃ、ああああっ!」
「…そんなにいいなら、思う存分突いてやる…!」
「ひっ! ぁぐ、〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!」

 椿の手が希望の背に爪を立て、切り裂かんばかりの勢いで引っ掻いた。痛みに逃げようともがく彼の首筋に噛み付き、抵抗など無駄だと思い知らせた。
 苦痛と快楽が希望の脳内で混濁し、思考を奪った。

「あああ、つ、ばき、おれ、もお、いく…っ!」
「まだだ、もう少し耐えろっ!」
「うう! ひぃ、やっ…!」

 必死に射精を堪える為に、希望は椿の肩を噛んだ。結腸を執拗に責められる度に、意識が持っていかれそうになるのを懸命に我慢した。
 腸壁が一層強く絡み、締め付ける。椿は希望を全力で抱き締め、絶頂を予感した。

「希望、いいぞ…っ!」
「つばきぃっ…!」

 獣じみた真紅の眼光が、一瞬穏やかな色を宿した。それは希望に安堵をもたらし、恋人への愛しさで胸を満たした。

「──────────────────っ!!!」

 椿に許されるままに希望は射精した。薄れていく意識で、精液の温かさが腹に放たれたのを感じた。

「寝るな」

 軽く頬を叩かれ、希望は覚醒した。自分に覆い被さる椿が、繋がったまま希望の体を支えて上体を起こした。

「ひゃあっ!?」

 対面座位になったことで椿の性器がより深く入り、希望の全身に快感が迸った。

「まだ収まりがつかなくてな。最後まで付き合ってもらうぞ」
「あっ…! …もう好きにして…!」

 椿は返答の代わりに、濃厚な口づけをした。

 プラシーボって凄いんだなぁ。希望は哭かされながらぼんやりと思った。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -