4




「ハッシュ!」
「イオナ」

三日月と共に早速この後の仕事の準備にとりかかっていたハッシュの後ろをパタパタと追いかけてきたのはイオナだ。
食堂での一件で何やら副団長たちと話をしながら張り詰めた表情でこちらを見守っていたイオナの姿はハッシュたちからも見えていた。

「…じゃあ、俺はもう行くから」
「はい!」
「!!なんかごめんね」
「別にいいよ」

慌ただしく駆け寄ってきたイオナに、気を使ったのか三日月がその場を外すと邪魔をしてしまったと謝罪するが三日月気にしていない様子を見せるとイオナはホッと息をついてから堰を切ったように本題を話し始める。

「さっきの、見てたよ!よかったね!」
「おう。俺もイオナのこと見えてた、ありがとな」
「えっ、何?」

急に自分に礼を言われ「私何もしてないよ?」と首を傾げるイオナにハッシュが「副団長のこと、」と返すとそれだけで通じたのか「あ、ああ…!」と合点がいった顔で照れ隠しするように手をパタパタとさせはじめた。

「べ、別にあれはだってユージンが悪いっていうかなんていうか…
あ…ほら、お兄ちゃんも味方してくれたし」
「ネフリーさんが?」

てっきり上の先輩達には厳しい目で見られているのだろうと思っていたからイオナからネフリーの名前が出てきて意外だったものの、言われてみると前にモビルスーツに乗りたいのかと聞いておきながらお説教やお小言もなくアドバイスをしてきたのは肯定的な反応だったかもしれない。

「…そう言えば、あの人この前話した時に目標があった方が強くなるみたいなこと言われたな…」
「へえ、お兄ちゃんが?」

甘やかす以外のこともちゃんとやってるんだね、と安心しているようでサラッと毒を吐いたイオナこそネフリーの言う死ねない理由であり、戦場の彼を奮い立たせているのだと思うとなんだかいたたまれないなという気持ちが込み上げてくるがまあ、仲がいい故に言えることもあるのだろう…ということにしておこう。ハッシュはそれ以上踏み込まないようにして話を続けた。

「…今思えばアドバイスみたいだったし……ネフリーさん反対しないんだな」
「『野心のあるやつがいた方が組織も成長する』って言ってたよ」


"私もさっき聞いた"、そう付け加えながらイオナが教えてくれた。

「とにかく、おめでとう!私も頑張るね」
「そればっかりだな」
「へへ、ほんとだ…でもそれってハッシュが頑張ろうって思わせてくれるからだよ」

それって凄いことじゃないかなあ、うん。一人で納得して頷くイオナにハッシュもつられて妙に納得した気持ちで笑う。
その後すぐに現場に向かうからと話を切り上げると、別れ際に「頑張ってね」とイオナは笑顔で送ってくれた。

…なんか、いいな。

モビルスーツに乗れるから、それだけではない心の余裕と高揚により一層気持ちを引き締めながらハッシュは足を進めた。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -