鬱陶しい人の対処法





うざい人の対処法、そんな本があれば今なら即決で買うだろう。誰を対処するかって?そんなものは決まってる。


「フィリア、もう飯は食べたか?まだなら一緒にいくぞ」
「仕事中です。公務執行妨害で王様に言いつけますよ」


今目の前で進路を塞ぐこの方、練紅炎様だ。本来なら外交官が来るはずの国の仕事を、わざわざ第一皇子自ら来る様になってもう何年経つか。


たまにこいつ実は暇なんじゃないかと思うことがあるが、全てに来ているわけではないし、軍の仕事もこなして居るらしいのでそれはないようだ。


「もう飯は食べたか?」
「さっき仕事中って言いましたよね?食べてても食べてなくても今は関係ありません」


何だこの人つうじねぇ、と思うも顔はポーカーフェイスを保つ。この国の王もこういう所があるので、ポーカーフェイスで乗り切るのはお手の物だ。


だが、どう振り切るかは考えられなかった。あの手この手と今まで振り切って来たため、はっきり言ってネタ切れだ。


あああ、どうしよう。そんな風に表面化で葛藤して居ると、前方にジャーファルさんを発見。これは良いタイミングだ、と視線を送った。


尚も話しかけて来る紅炎様に、適当に相槌を打ちながら熱視線をおくれる。30秒程で、ジャーファルさんはやっとこちらに気がついた。


はっ!と顔を驚愕に染め、こちらにずんずん近づいて来る。よし来た!ジャーファルさん、貴方なら助けてくれると思っていましたよ!


「紅炎様!またフィリアにちょっかいを出して!用がすんだのならお部屋にお戻りください!」


初めのうちは煌帝国の外交官代理、しかも第一皇子という紅炎様に遠慮して、あまり強く言えて居なかったジャーファルさん。しかし最近はキツめに注意してくれる様になって、私はとっても助かっていた。


「俺の用はフィリアに合う事だ。わざわざお前達に言う必要はないだろう」
「なっ!」


紅炎様は注意をあっさりと跳ね除けてしまった。私は内心舌打ちを打った。ジャーファルさんの注意スキルが上がるに比例して、紅炎様のスルースキルも上がっていたようだ。


「紅炎様!フィリアは今仕事中で忙しいんです!今日の所は見逃してやってくれませんか」
「俺からもお願いします!」


ジャーファルさんが返す言葉を失い、新たな理由を考えていたら、後ろからヤムライハさんとシャルルカンさんの声が聞こえて来た。2人とも私のために紅炎様を止めてくださっている。この城で働いていてよかったと、つくづく思った。


「紅炎様、私からもお願いします。早くしないと洗濯物が皺くちゃになってしまいます」


私が目を見ながら最後にそういうと、紅炎様は渋々だがお部屋に戻ってくださった。やっと戻ってきた平穏に、マジ最高と鼻歌を歌った。








「フィリア」


仕事が終わり、後は部屋で寝るだけか〜と肩を回しながら廊下を歩いて居ると、庭の方から私を呼ぶ声が飛んで来た。


庭には、酒を持ったまま、上品に月を楽しむ紅炎様がいた。傍にいき隣に腰掛けると、紅炎様がもつ物と同じお猪口を渡された。待ち伏せかよ。


「ありがとうございます」


とくとく、と控えめに注がれた酒をくいっと飲み干す。酒は強い方ではないが、断るわけにもいかない。


私のお猪口が空になったのをみれば、紅炎様はまた酒を注ぐ。案外美味しいお酒に、静止の声をあげるのを忘れてしまった。


「紅炎様は、側室がたくさんおられるのでしょう」


気づけばそんなことを口走っていた。そんなに飲んだ記憶は無いのに、何故かふわふわした気分だった。


「何故そんなことを聞く」
「さあ?気になりました」


はっきりしない紅炎様に、なぜかイライラした。ムッとした顔を向ければ、紅炎様はにやにやしていて、余計ムッとした。


「気になった、か」
「悪いですか、女性にこういうことを聞かれるのはお嫌いですか」


ふわふわしていて、自分が何を言っているのかよく分からなかった。なぜこんなに紅炎様の女性関連の事が気になるのか。


「フィリア、知りたければ俺を受け入れろ。嫌という程教えてやる。俺が、誰を好いて、誰が欲しいか」


朦朧とする意識の中で、紅炎様の顔が近づいてくるのがわかった。いつもはウザいウザいと思っていたのに、この時はとても光って見えて、受け入れたらいいじゃないか、と目をつむった。













(紅炎様、これ駄目なやつですよ。酔わせてとか駄目やなつです)
(結果がよければ過程はどうでもよい)
(うわああ、王やジャーファルさんたちに何といえばいいか)





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