暗黙のルール




「り、涼太ああああああ!!!!!」


今日も今日とて、私立帝光中学校には私の怒号が響き渡る。発端はついさっき終わったお弁当の時間。


私と涼太の2人は裏庭でひっそりとお弁当を食べていた。目立つ私達は、ここでしか静かに食べられないのだ。


そこで2人で仲良く、とはいえ言い合いを挟みながらも和やか(?)に食事をしていたそんな時、突然吹いた風によって私のスカートが、まぁ、その、なんだ、めくれた。


いきなりの事で固まった私と、絶対に中を見たであろう涼太。なかった事にしようと口を開いた私にかぶせる様に涼太は言った。


「白っスか。っふ」


これで私が、いや女子の大半が怒らずに居れるだろうか。叫んだ私と逃げた涼太によって、ほぼ毎日行われている追いかけっこが本日も始まった。


「見たのは俺の所為じゃないっしょ!理不尽っスよ!」
「なにが理不尽か!! あのっふ、は何だ!何で鼻で笑った!」
「だって白って素直な女性が「ぎゃあああああ!!やめろ!それ以上は言わせない!」なんスか!名前が聞いたんでしょ!」


走りながら大声で私の下着の色を暴露しようとする涼太を私は叫んで止める。仮にも彼氏なのにそれってどうなの!? 信じられない目で涼太を見た。


裏庭に弁当を起きっぱなしだが、そんな事気にしてられない。いつからか、追いかけっこで捕まった方が帰りのご飯持ち、という暗黙のルールが出来ていたのだ。


今回追いかけているのは私。なので涼太を捕まえたら今日の買い食いはただになる。昨日は涼太に捕まってアイスを買わされた。


「待て涼太!! 女のスカートを覗いた罪は重い!」
「それ誤解生むからやめて!? 覗いたんじゃなくて名前が見せてきたんスよ」
「それも誤解生むからやめて!?見せたんじゃないから!」


もはや校舎内という事も忘れて言い合いを続ける。校舎に入ると涼太の逃走ルートが数パターンに分類できると私は気づいていた。


今日は絶対捕まえたい。パンツを見られたとか恥ずかしくて死ねる。絶対にハーゲンダッスを奢らせる!ぐるぐると考えながら私は注意深く涼太を観察した。


涼太が理科室前の曲がり角を曲がった。ここを曲がるという事は次は北側の階段を登るハズ!


私は後ろを振り返って階段に先回りした。階段に着くため左に曲がると、丁度目の前に涼太が迫っていた。


「っうええ!?名前!」
「ふん!お前はもう、捕まる!」
「何それダサっぎゃあ!」


かなり早く走っていたのか、止まれなかった涼太の胸に飛び込む。捕獲完了だ。


「っへん。今日は私の勝ち〜。ハーゲンダッスね!」
「白レースに捕まるとか屈辱っスわ」
「やめてえええええ!」




その後部活に行くと、皆から白って呼ばれて帰り道に涼太にハーゲンダッスより高いティラミスを奢らせたのは別の話。






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