人間関係




私は人脈というものが広い方だ。場に溶け込むのが得意で、初対面でも大体は仲良くなれる。所詮、広く浅くな付き合い方が多い方だった。もちろん深く付き合う親友だっている。


さて、そんな私だが彼氏である黄瀬涼太の所属する、男子バスケ部のレギュラー達とは、親密になりたく無いと思っていた。


赤司は威圧感凄いし、緑間は占い信者だし、紫原はお菓子教だし、青峰は目つき悪いし、黒子は、うん、存在に気づいてなかった。


そんな訳で避けていたのだ。そして避けていたと過去形なのは、今は親密だからである。私自身女子バスケットボール部のレギュラーであるのと1年の時合同合宿をした事で、避けるなどは到底無理だったのだ。


「名字、手伝おうか」
「おおお、赤司!ありがとう」
「赤ちんが手伝うなら俺も〜、あだ名ちん俺にもちょーだい?」
「よしまかせろ!って言いたいところだが自分でとっておくれやい。両手ふさがってるんだ」


それにこやつら、話してみると個性が強くて案外楽しいのだ。赤司は同じPGとして意見交換もできるし、緑間のなのだよは癖になる。紫原は扱いさえ覚えたら可愛いし青峰は内面ピュアな見掛け倒し奴だったし、黒子とは本の好みが合う。


親密になりだしてから、前から話しておけば良かったと心底思った。


「これ何処に運んでんの?」
「社会科室なのだよ」
「緑間が聞いたら怒るぞ」
「大丈夫っスよ〜」


規格外な身長の紫原の横に、女子の平均の私、そして平均より少し上な赤司。赤司と紫原に至っては髪が赤と紫なんて得点付きだ。


そんな3人で荷物を抱えながらよたよた歩く姿はかなり目立つだろう。あ、赤司はよたよたじゃなかった。


涼太と付き合ってた時点で見られることには慣れたのだが、こうもあからさまにちらちら見られては少しむず痒い。


「あだ名ちん平均身長だけど俺らと並ぶとちっちゃく見えるね〜、あれ、えっと……カモノハシ?」
「おいまて紫原、面かせよ」


社会科室遠いな〜と話しながら考えていると、隣の紫原が唐突にそんなことを言いだした。カモノハシってなんだ。そのたとえ合ってるのか、むしろ必要なのか。


反対隣の赤司をちらりと伺うと、自分が大きく見えていると思ったのか少し花がとんでるように見える。


部活中、赤司は常にそんな状態なのかと思うと怒れなくなったのと謎の親近感が湧いた。そして赤司がちょっと可愛いなんて思ってしまった。


一応ぷりぷり怒ってみたものの興味なさげに空返事しか返ってこず、自分がふっかけてきたくせにこの野郎と地団駄を踏みそうになった。


「はい到着〜」


漸く着いた社会科室の扉を、紫原が開けた。私が怒ってみたことは総スルーらしい、ちくしょう。


社会科室は先生が寝ぐらにしていると噂されて居るだけあって、生活感が漂っていた。中央にあるソファーは毛布がかかっておりいかにもな感じだった。


「これ絶対先生が寝てる場所だよね」
「こうも易易とバラして良いのか」


地図やらプリントやらを片しながら談笑する。紫原はどうやらお菓子を見つけたらしくもそもそ食べていた。先生のものだろうがこんな空間作った罰だと思えば注意する気にはなれなかった。


方し終えた後、3人で体育館まで行く事になった。違う体育館だが、途中までは同じ道なのだ。


「やー、付き合わせちゃってごめんね〜。もう練習始まってるでしょ」


荷物は3人とも持ったまま来たので、そのまま歩いていた。男バス1軍の使う第一体育館が見えてきた。それじゃあね、と軽く手を降り2人と別れる。


丁度休憩時間にはいる直前だったらしく、換気のため開いていた窓を通り過ぎる時、寝転んだ涼太と目があった。


お互いにひらひらと手を振りあい、私は女バスの体育館へと足を向けた。







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